ポイント
- Atg15のC末端領域が「安全装置」として活性中心を閉じ、液胞内でたんぱく質分解酵素による切断と、分解基質である膜への結合によって解除される仕組みを提示しました。
- 切断後にAtg15表面に露出した3つの疎水性領域(HR1〜HR3)が、構造の開閉、膜への結合、脂質基質の取り込みを協調して担うことを示しました。
- Atg15は小さく湾曲した膜への結合嗜好性を示し、正の曲率を持つ基質膜を選択的に分解する一方、負の曲率を持つ液胞膜を分解しない選択性があることを示唆しました。
横浜市立大学 大学院生命ナノシステム科学研究科の境 祐二 特任准教授、東京科学大学 総合研究院 細胞制御工学研究センター 堀江(川俣) 朋子准教授らの研究グループは、北海道大学の野田 展生 教授、東京科学大学の大隅 良典 特任教授らと共同で、脂質分解酵素Atg15が必要な場所でのみ働く分子機構を明らかにしました。
分⼦動⼒学シミュレーション、酵⺟細胞を⽤いた実験、試験管内で酵素活性を測る実験を組み合わせた結果、Atg15は普段は活性中⼼を閉じた状態にあり、脂質分解活性が低く抑えられていること、酵素の一部が切断され、膜に結合することで活性中心が開き脂質分解活性が上昇すること、平らな膜よりも⼩さく強く湾曲した膜に結合しやすいことが分かりました。これは、細胞自身の重要な膜を損傷し得る危険な酵素が分解すべき膜だけを安全に壊すための仕組みの一端を示します。
本研究成果は、科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に掲載されました(現地時間2026年7月23日)。
本研究は、JSPS 科学研究費助成事業(JP19H05707、JP22H04640、JP23K05715、JP23K06667、JP23K20044、JP24H00060、JP24K01980、JP25H00966、JP25H01320、JP25H01321、JP25K09559、JP26H01640)、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR214X)、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR20E3)、武田科学振興財団の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.13MB)
<論文タイトル>
- “Structural and mechanistic basis for membrane recognition and activation of the vacuolar lipase Atg15”
- DOI:10.1073/pnas.2601290123
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