ポイント
- カイラル磁性体において、量子ゆらぎの影響により非相反電流が低温で対数温度依存性を示すことを理論的に発見
- この対数温度依存性の微視的機構が磁気モーメントの量子ゆらぎによる近藤効果であることを解明
- 量子効果を用いた磁気デバイスの基礎理論としてスピントロニクスへの応用に期待
東京科学大学(Science Tokyo) 理学院 物理学系の石塚 大晃 准教授らの研究グループは、量子ゆらぎと局所磁気相関の協奏効果により非線形電気伝導度(非相反電流)に特徴的な対数温度依存性が生じることを理論的に示しました。
カイラル磁性体では、磁気モーメントが渦状に巻いたスキルミオンや螺旋(らせん)状態などに代表される不思議な磁気状態を生じることが知られており、次世代スピントロニクスや量子技術への応用が期待されています。こうした技術応用につながると考えられている現象の1つが非相反電流です。従来の理論研究は磁気モーメントを古典局在スピンで近似してきましたが、MnSiなどのカイラル磁性体における実験では量子ゆらぎの影響が示唆されており、その理論的解明が求められていました。
本研究では、磁気モーメントの量子ゆらぎを考慮した計算手法を構築し、量子ゆらぎの影響によって非線形電気伝導度σ(2)(非相反電流の応答係数)に対数温度依存性 σ(2)∝logT が現れることを示しました。さらに、この機構を詳細に解析し、近藤効果による磁気散乱の増幅が対数温度依存性の起源であることを明らかにしました。
本成果は、磁性金属における量子ゆらぎの効果が非線形輸送特性に与える影響について新しい理論的枠組みを与えるものであり、量子効果によるスピントロニクス素子の性能向上へと応用されることが期待されます。
本研究成果は、米国物理学誌「Physical Review Letters」に2026年7月15日(米国東部時間)付で掲載されました。
本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(JP23K22418、JP25H00841)および科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR2452)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.23MB)
<論文タイトル>
- “Kondo Effect in Nonreciprocal Response”
- DOI:10.1103/y243-ygbf
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