ポイント
- 手術用吸収糸を用いて脂質ナノ粒子(LNP)や細胞外小胞(EV)を局所的かつ持続的に送達できる生体吸収性ナノファイバーシート(BNFシート)を開発
- 乾燥時の毛細管現象を利用してナノ粒子をシート内に保持し、生体内で徐々に放出する独自機構を実現
- BNFシートの完全生体内吸収と炎症・線維化を伴わない、高い生体適合性を確認
- 静脈内投与や腹腔(ふくこう)内投与と比較して、薬剤を病変部位へ効率よく送達させることに成功
- 本技術によるmRNA医薬、核酸医薬、EV治療など幅広いナノ医薬への応用に期待
名古屋大学 大学院医学系研究科 産婦人科学の鈴木 一弘 客員研究者(現 MD アンダーソンがんセンター 博士研究員)、医学部附属病院 産科婦人科の横井 暁 講師、大学院医学系研究科 産婦人科学の梶山 広明 教授、名古屋大学 大学院工学研究科の安井 隆雄 教授らの研究グループは、手術用吸収糸を用いて、脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle:LNP)や細胞外小胞(Extracellular Vesicle:EV)を患部へ局所的かつ持続的に送達する新しいドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)を開発しました。
近年、mRNA医薬や核酸医薬の送達技術としてLNPが注目されていますが、多くは全身投与であるため、病変部への到達効率が低く、副作用が問題となることがあります。
本研究では、生体吸収性ナノファイバーシート(Bioabsorbable Nanofiber Sheet:BNFシート)にLNPを搭載することで、薬剤を病変部へ局所的かつ持続的に放出する技術を開発しました。卵巣がん腹膜播種(はしゅ)マウスモデルでは、抗がん剤カルボプラチン(Carboplatin)を搭載したLNPをBNFシートから持続的に放出させることで、少量の薬剤投与にもかかわらず高い抗腫瘍(しゅよう)効果を示しました。さらに、本シートは生体内で完全に吸収され、炎症や線維化などの有害反応を認めませんでした。またLNPだけでなくEVも送達可能であることが確認されました。
本成果は、ナノ医薬と新規DDSを融合する新しい治療基盤技術として、がん治療のみならず、mRNA医薬や細胞外小胞治療など幅広い個別化医療への応用が期待されます。
本研究成果は、2026年7月10日(現地時間)付で国際学術雑誌「Cell Reports Physical Science」に掲載されました。
本研究は、JST 創発的研究支援事業「がん細胞外小胞の臨床応用へ向けた基盤技術開発研究」(JPMJFR204J)、戦略的創造研究推進事業 CREST「原始卵胞維持機能をもつ超生体卵巣の創出」(JPMJCR2576)の支援のもとで行われたものです。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Bioabsorbable nanofiber sheets for localized and sustained delivery of therapeutic vesicles”
- DOI:10.1016/j.xcrp.2026.103418
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