ポイント
- 磁気交換力顕微鏡(MExFM)を用いて、酸化マグネシウム薄膜上の単一ホルミウム(Ho)原子(単一原子磁石)のスピン(磁気の向き)を、電流を流さずに力学的に読み出すことに成功しました。
- 探針をホルミウム原子に近づけてひずみを生じさせることで、吸着サイトの対称性を制御し、スピンの向きを反転(書き込み)させる新たな原理を実証しました。
- 本成果は、ジュール熱による発熱やエネルギー損失が極めて少ない、究極の次世代超高密度磁気記録デバイスの実現に向けた重要な一歩になると期待されます。
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻の安達 有輝 特任研究員、上田 和樹 大学院生、安井 勇気 助教、杉本 宜昭 教授らの研究グループは、磁気交換力顕微鏡(MExFM)を用いて、酸化マグネシウム薄膜上に吸着した単一のホルミウム(Ho)原子(単一原子磁石)のスピン(磁気の向き)を、電流を流さずに直接読み出し、書き込むことに成功しました。従来の磁気記録デバイス(ハードディスクなど)では、情報の読み書きに電流を流す必要があり、ジュール熱によるエネルギー損失が高集積化の大きな障壁となっていました。
本研究グループは、電流の代わりに探針と原子の間に働く量子力学的な力である磁気交換力を利用してスピン状態を検出し、さらに探針を極限まで接近させて原子にひずみを加えることで、スピンを反転させました。
本成果は、ジュール熱を伴わない磁気記録という新たな動作原理を提示するものであり、将来の省エネルギーかつ超高密度な単一原子メモリーデバイスの実現に向けた重要な一歩になると期待されます。
本研究成果は、2026年7月9日(英国夏時間)付で「Nature Communications」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR203J、研究課題名:「原子間力顕微鏡を用いたナノ磁性の力学制御」、研究代表者:杉本 宜昭)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(課題番号:JP26K01386、JP26H01330、JP25K22215、JP25K17946、JP25K17933、JP24H01175、JP23K13656)、旭硝子財団、村田学術振興財団、精密測定技術振興財団、岩谷直治記念財団、日本板硝子材料工学助成会の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Force-Based Reading and Writing of Individual Single-Atom Magnets”
- DOI:10.1038/s41467-026-74922-z
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