東京理科大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年7月8日

東京理科大学
科学技術振興機構(JST)

世界初、超急冷を必要としない強磁性正20面体準結晶を実現

~高品質試料の実現で準結晶磁性研究が新たな段階へ~

ポイント

東京理科大学 先進工学部 マテリアル創成工学科の田村 隆治教授らの共同研究グループは、これまで溶融した合金を極めて高速に冷却する特殊な「超急冷法」によってのみ得られていた強磁性正20面体準結晶を、通常のアーク溶解と熱処理によって作製することに世界で初めて成功しました。従来の強磁性準結晶は超急冷に依存する準安定相であったため、高品質化や精密な物性評価が困難でした。本成果により、強磁性準結晶は特殊な準安定物質から、通常の熱処理によって作製・高品質化できる新しい磁性材料群へと発展し、準周期構造における磁気相転移や磁気臨界現象を本格的に研究できる道が開かれました。

準結晶は、原子配列に周期性を持たないものの、長距離秩序と呼ばれる広範な規則性を示す特殊な物質であり、通常の結晶とは異なる電子的・熱的性質から注目を集めています。しかし、強磁性準結晶はこれまで超急冷によってのみ得られる準安定相であったため、その本質的な磁性の理解が困難でした。そこで本研究グループは、超急冷を必要としない準結晶の実現がその解明に向けた鍵になると考え、機械学習を活用して新たな準結晶候補を探索し、その合成と物性評価を行いました。

今回、Au(金)・Cu(銅)・Al(アルミニウム)・In(インジウム)・R(R = Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム))の5つの金属元素からなる3種類の新たな正20面体準結晶の合成に成功しました。これらは通常のアーク溶解と熱処理により作製可能で、長時間の熱処理後も準周期構造を維持する優れた熱安定性を示します。全ての準結晶が明確な強磁性秩序を示す一方、磁気臨界挙動は希土類元素の種類によって系統的に異なり、Gd系では平均場理論から大きく逸脱するのに対し、TbおよびDy系では平均場的挙動を示すことが定量的に明らかとなりました。これらの結果は、準結晶における磁気臨界挙動が準周期構造とスピン対称性の組み合わせによって決定されることを示しており、希土類元素の選択によって磁気臨界挙動を制御できる新たな材料設計指針を提示するものです。

また本研究は、材料科学・物性物理・結晶学・AIを融合した学際的研究であり、機械学習により予測した新物質を実際に合成・発見した点にも意義があります。さらに本成果は、強磁性準結晶を超急冷に依存せず作製できる道を開き、準周期構造における磁気相転移や量子現象の本格的研究を可能にする研究基盤を提供するものです。

本研究成果は、2026年7月7日(現地時間)に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金(JP19H05817、JP19H05818、JP19H05819、JP21H01044)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR22O3)の支援を受けて実施したものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Bulk Ferromagnetic Icosahedral Quasicrystals without Rapid Quenching”
DOI:10.1021/jacs.6c03748

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