ポイント
- 高周波信号の伝送損失の原因となる「分子ゆらぎ」を抑制する新たな分子設計を提案
- ダブルデッカー型シルセスキオキサンと疎水性官能基の導入により、「超低誘電損失」と「湿度安定性」という相反特性を両立
- 10~20GHz(ギガヘルツ)帯で極めて低い誘電正接を実現し、6G通信・AI半導体・先端半導体パッケージ材料への応用に期待
東京科学大学(Science Tokyo) 物質理工学院 材料系の早川 晃鏡 教授、安藤 慎治 教授、高橋 陸 助教、佐子 奈津子 研究員らの研究グループは、「分子ゆらぎ」を制御した新しいポリイミド絶縁材料の開発、および新材料による高周波誘電損失の低減に成功しました。
高速・大容量通信ではGHz帯の高周波信号が利用されますが、絶縁材料内部の分子運動や吸着した水分子に起因する“ゆらぎ”によって、信号エネルギーが熱として失われることが重要な課題となっています。特に実使用環境では、空気中の水分子が材料内部に取り込まれ、分子構造にゆらぎが生じることで誘電特性が劣化し、信号損失が増大することが知られています。
本研究では、かご型有機–無機ハイブリッド構造であるダブルデッカーシルセスキオキサン(DDSQ)と疎水性シクロヘキシル基を組み合わせた独自の分子設計により、高周波領域における双極子分極由来の高分子鎖ゆらぎを抑制しました。DDSQを主鎖に有するポリイミドは、10~20GHzの周波数帯において低い誘電率(2.57)および極めて低い誘電正接(0.0019)を示すとともに、相対湿度10~60%の範囲において優れた湿度安定性を示しました。本成果は、高周波領域における新たな高分子絶縁材料の設計指針を示すものであり、次世代半導体パッケージ、高速情報処理デバイスを支える基盤材料への応用が期待されます。
本成果は、2026年7月6日(現地時間)付で、「Nature Portfolio」の国際学術誌「Communications Materials」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CRESTの研究課題「ゆらぎ制御による次世代半導体用高分子絶縁材料の創製」(課題番号:JPMJCR2546、研究代表者:早川 晃鏡 教授)の支援を受けて実施されました。本CREST研究では、高周波領域における分極ゆらぎや水分子由来の構造ゆらぎを分子レベルで制御することで、次世代半導体・情報通信を支える高分子絶縁材料の創製を目指しています。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.48MB)
<論文タイトル>
- “Humidity-Robust Semi-Aromatic Polyimides with Cyclohexyl-Substituted Double-Decker-Shaped Silsesquioxane Exhibiting Low Dielectric Losses at 10-20 GHz”
- DOI:10.1038/s43246-026-01217-7
<お問い合わせ>
-
<JST事業に関すること>
金山 晋司(カナヤマ シンジ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K's五番町
Tel:03-3512-3531 Fax:03-3222-2066
E-mail:crestjst.go.jp
-
<報道に関すること>
東京科学大学 総務企画部 広報課
取材申し込みページ:https://www.isct.ac.jp/ja/001/media
Tel:03-5734-2975 Fax:03-5734-3661
E-mail:mediaadm.isct.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3 サイエンスプラザ
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp