ポイント
- 13族に属する典型元素であるガリウム種が、可視光照射によって、遷移金属に特徴的な「酸化的付加」を示すことを実証
- 有機合成で重要なヨウ化アリールの炭素-ヨウ素結合を活性化し、13族元素では世界初となるヨウ化アリールの酸化的付加反応を達成
- 光励起されたガリウム種が基底状態のガリウム種と電子を授受する「光誘起不均化反応」という新しい反応機構を発見
- 典型元素による遷移金属型反応の新たな設計指針を提示し、希少で高価な遷移金属に代わる持続可能な触媒反応の実現に向けた重要な一歩に
大阪大学 大学院工学研究科の向井 虹渡さん(博士後期課程)、岩崎 草太さん(博士前期課程)、兒玉 拓也 助教、鳶巣 守 教授らの研究グループは、同大学院 基礎工学研究科の岸 亮平 准教授、広島大学 大学院先進理工系科学研究科の安倍 学 教授らの研究グループとの共同研究により、典型元素である有機ガリウム種が光照射によってヨウ化アリールの炭素―ヨウ素結合を活性化し、遷移金属に特徴的な「酸化的付加」と呼ばれる反応を示すことを明らかにしました。
ヨウ化アリールの炭素―ハロゲン結合を活性化する酸化的付加は、パラジウムやニッケルなどの遷移金属錯体を触媒とするクロスカップリング反応の反応機構における重要な素過程の1つです。一方、アルミニウムやガリウムなどの典型元素では、ヨウ化アリールを活性化することは困難であり、特にガリウムなどが属する13族元素によるヨウ化アリールの活性化は、これまで知られていませんでした。
研究グループは、電子の授受が可能なレドックス活性配位子の1つであるフェナレニル型配位子を導入した1価ガリウム化合物に可視光を照射すると、励起状態のガリウム種と基底状態のガリウム種との間で電子移動が起こり、「ラジカルイオン対」が生成する「光誘起不均化反応」という新しい反応機構を発見しました。このラジカルイオン対がアリールヨウ化物の炭素―ヨウ素結合を活性化し、最終的に酸化的付加生成物を与えることを明らかにしました。
本成果は、遷移金属に特有と考えられてきたハロゲン化アリールの酸化的付加反応を典型元素へと拡張するものであり、希少金属に依存しない持続可能な分子変換技術の開発につながることが期待されます。本成果は、希少で高価な遷移金属に代わる、典型元素を活用した持続可能な触媒反応の実現に向けた重要な一歩となります。
本研究成果は、米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」に、2026年7月2日(日本時間)に公開されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「典型元素とπ電子の協奏が拓く革新的物質機能材料創製」(課題番号:JPMJFR236I)および日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「炭素資源変換を革新するグリーン触媒科学」(課題番号:JP23H04901、JP26H00884)の支援のもとで行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(619KB)
<論文タイトル>
- “Photoinduced Disproportionation Enables Oxidative Addition of Aryl Iodides at a Gallium(I) Center”
- DOI:10.1021/jacs.6c08303
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