ポイント
- 自らの分子構造を変えながら外部からの力を受け流す、新しい高靭性(こうじんせい)エラストマーを開発。
- 力が加わると、分子が「動く」「一部が切れる」「鎖どうしが絡み合う」という3つの変化が順番に起こり、材料の破壊を抑えることを解明。
- 従来型のポリウレタンエラストマーと比べて靭性が約5倍に向上。柔らかく壊れにくい材料として、製品の長寿命化や信頼性向上への貢献に期待。
大阪大学 大学院理学研究科 高分子科学専攻の大学院生の李 雪 さん(博士後期課程)、Xiao Chunlin 特任研究員(常勤)、井筒 治棋 さん(博士後期課程)、浦川 理 准教授、井上 正志 教授(現 大阪大学 名誉教授)、小林 裕一郎 助教、山口 浩靖 教授らの研究チームは、強い力を受けても壊れにくい高靭性エラストマーの開発に成功しました。
エラストマーは、タイヤやゴム製品、柔軟な電子材料など、私たちの身の回りのさまざまな製品に使われているゴム状の高分子材料です。柔らかくよく伸びる一方で、強い力が加わると損傷や破壊につながりやすく、柔らかさと壊れにくさを両立することが大きな課題でした。
今回、研究グループは、分子が自らの形やつながり方を変えながら力を受け流す材料を設計しました。具体的には、力を受けたときに、まず分子が動いて力を逃がし、さらに強い力が加わると分子の一部が切れて衝撃を吸収し、最後に切れた後の高分子鎖が絡み合うことで材料全体の構造を保つ仕組みを1つの材料に組み込みました。その結果、従来型のポリウレタンエラストマーと比べて靭性が約5倍に向上し、柔らかさと壊れにくさを両立する材料を実現しました。高分子材料の靭性を向上させることで、製品の長寿命化、機械的損傷による故障の低減、材料廃棄や交換頻度の削減につながることが期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、2026年7月1日(日本時間)に掲載されました。
本研究は、JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(JPMJSP2138)、同 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR2474)、JSPS 科研費 挑戦的萌芽(JP22K19066、JP24K21673)、基盤研究B(JP23K23413、JP24K01539)、旭硝子財団、徳山科学技術振興財団の一環として実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(946KB)
<論文タイトル>
- “Toughening Elastomer via Sequentially Activated Multi-Pathway Energy Dissipation”
- DOI:10.1038/s41467-026-74148-z
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