ポイント
- オートファジーを自在にオン/オフできるマウスを用いて、神経細胞内の品質低下(凝集たんぱく質の蓄積やシナプス・軸索の異常など)による脳機能障害が出現しても、そこから回復できることを実証しました。
- 従来の研究における「いかに神経機能低下を防ぐか」という視点を超え、神経組織が本来持つ「回復力(レジリエンス)」を示しました。
- 本成果は、神経変性疾患によって低下した脳機能を、発症後であっても細胞内品質を向上させることで改善できる可能性を示唆します。
東京大学 大学院医学系研究科の水島 昇 教授、江口 智也 助教らによる研究グループは、細胞内のたんぱく質やオルガネラを分解する主要経路であるオートファジーの活性を神経組織で任意のタイミングでオン/オフできるマウスを開発し、神経機能の回復可能性を実証しました。
本研究では、オートファジーを一時的に「オフ(抑制)」にすることで、神経細胞内に異常なたんぱく質の蓄積や軸索の腫脹(しゅちょう)、シナプスの形態異常を引き起こし、運動機能や認知機能を低下させました。しかし、その後オートファジーを再度「オン(正常状態)」にすると、蓄積した異常たんぱく質が分解除去されるだけでなく、一度失われた運動能力や学習能力までもが回復することを明らかにしました。
神経機能の低下を防ぐことを主眼としてきた先行研究と比較して、本研究はひとたび機能障害に陥った神経機能であっても復活させることができるという「回復力」に焦点を当てたものです。この研究成果は、今後脳の機能を回復させるための治療戦略にもつながることが期待されます。
本研究成果は、2026年6月25日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Science」に掲載されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO「水島細胞内分解ダイナミクスプロジェクト(課題番号:JPMJER1702)」、科研費 特別推進研究(課題番号:JP22H04919)、同 基盤研究S(課題番号:JP25K24598)、同 先端モデル動物支援プラットフォーム(課題番号:JP16H06276)」、日本応用酵素協会(課題番号:23T002)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Reversible suppression of autophagy in mouse models reveals neuronal resilience”
- DOI:10.1126/science.ady3911
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