ポイント
- フォトン・アップコンバージョン(UC)は可視光をより高エネルギーの紫外光へ変換できる技術であり、その実用化には固体材料の開発が不可欠。
- 発光分子のsp3炭素を起点とした立体障害の精密設計により、固体状態において高い発光効率と高効率なエネルギー移動の両立に成功、可視光→紫外光への高い変換効率1.9%を達成。
- 太陽光レベルの弱い光で駆動可能であることから、太陽光エネルギーを活用した光触媒反応(環境浄化や水素発生など)への応用に期待。
フォトン・アップコンバージョンは、低エネルギーの光を高エネルギーの光へと変換する技術であり、可視光から紫外光を生成することが可能です。紫外光は、有害物質の分解や抗菌、水素発生などを担う光触媒反応の駆動に不可欠ですが、太陽光に含まれる紫外光の割合は非常に低いという問題があります。さらに、実用化に向けて固体型のフォトン・アップコンバージョン材料の開発が求められていますが、これまで可視光を紫外光へ高効率に変換可能な固体フォトン・アップコンバージョン材料は報告されておらず、その実現が強く期待されています。
今回、九州大学 大学院工学研究院の君塚 信夫 教授(現 ネガティブエミッションテクノロジー研究センター 特任教授)、佐々木 陽一 准教授、水上 輝市 特任助教(当時)、同 大学院工学府の原田 直幸 大学院生(当時)、庄山 隼斗 大学院生、Nutnicha Boonmong 大学院生、渡辺 侑哉 大学院生(当時)、分子科学研究所の江原 正博 教授(兼 総合研究大学院大学 教授)、Pei Zhao 特任助教らは、三重項-三重項消滅(TTA)機構によるフォトン・アップコンバージョンに着目し、固体状態において可視光から紫外光への高効率変換を実現する分子材料を見いだしました。
本研究では、発光分子のsp3炭素を起点として分子骨格の垂直方向にアルキル基を導入する新しい分子デザインを採用することで、固体状態において高い発光性と効率的な三重項エネルギー移動を両立することに初めて成功しました。その結果、可視光から紫外光へのアップコンバージョンにおいて、高い変換効率1.9%(最大50%)を達成しました。さらに、本材料は地上に到達する太陽光レベル(数mW/cm2)の弱い光照射下でもアップコンバージョンを示し、紫外光を生成できることを確認しました。本成果は、固体フォトン・アップコンバージョン材料における新たな分子設計指針を提示するものであり、光触媒と組み合わせることで、太陽光エネルギーを活用した環境浄化や水素発生など、幅広い応用展開が期待されます。
本研究成果は、2026年6月23日(日本時間)に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX24D8)、同 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)(JPMJAP2508)、JSPS 科研費 (JP20H05676、JP22KJ2393、JP22H05133、JP24K17745)の支援を受けたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.49MB)
<論文タイトル>
- “Sterically Protected π-Electron Systems for Efficient Solid-State Photon Upconversion”
- DOI:10.1038/s41467-026-73898-0
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