京都大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年6月1日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

ビニルポリマーの立体構造を制御する新戦略

~弱い相互作用で側鎖の方向を思い通りに~

京都大学 大学院工学研究科 化学理工学専攻の西川 剛 助教、鈴木 宏史 博士後期課程学生(研究当時)、大内 誠 教授の研究グループは「非古典的水素結合」と呼ばれる弱い相互作用が鍵となってビニルポリマーの立体規則性(側鎖の方向)が制御される現象を見いだしました。立体規則性はプラスチックをはじめとする高分子材料の結晶性や材料の硬さや強靭(きょうじん)さといった力学特性に影響を与えることが知られており、さらに安定性や分解性にも影響する可能性があります。しかし、立体規則性を制御する手法はいまだ限られています。

本研究では、高分子材料(ポリマー)の原料となる分子(モノマー)として独自に研究を進めてきたホウ素が二重結合部分に直結した分子に対し、ホウ素上の保護基の適切な位置に酸素原子を導入した分子を設計しました。その結果、重合に関与する二重結合部分の炭素-水素結合と酸素原子の間に働く「非古典的水素結合」という弱い相互作用が重合中のモノマー分子の配座に影響を与えることが明らかとなりました。これにより、側鎖が互い違いに反対方向を向いたシンジオタクチックと呼ばれる立体規則性をもつポリマーが生成することを見いだしました。一方で、酸素原子を含まないモノマーからは、側鎖が同じ方向を向いたイソタクチックポリマーが生成し、酸素原子の有無によって全く異なる立体規則性のポリマーを作り分けられることが分かりました。さらに、得られたポリマーはシンジオタクチックの立体規則性を保持したままポリビニルアルコール(PVA)へと変換でき、制御された立体規則性に基づく特異的な結晶化挙動を示しました。本成果は今後、さまざまなポリマーの立体規則性を制御する新たな手法の開発につながるとともに、ポリマーの物性や機能を目的に応じて設計する材料開発へと発展することが期待されます。

本成果は2026年6月1日(ロンドン時間)に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR23N6)、同事業 CREST(JPMJCR23L1)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業[若手研究:JP22K14724、特別研究員奨励費:JP23KJ1374、基盤研究(S):JP24H00052、学術変革領域研究 化学構造リプログラミングによる統合的物質合成科学の創成(公募班):JP25H02028]の支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“The Key Role of an Intramolecular Non-classical Hydrogen Bond of Vinylboron Monomer for Stereoselective Polymerization”
DOI:10.1038/s41467-026-73603-1

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