ポイント
- 自発的に停止する電解重合反応により、単分子レベルの超極薄ポリマーフィルムが得られることを見いだしました。
- 普段重合が起こらないと考えられるほど低い電圧領域で発生する重合反応の機構を詳細に明らかにしました。
- 電池の性能を左右すると言われる電極表面上のSEI(solid electrolyte interphase)被膜の形成メカニズム解明への寄与が期待されます。
東京大学 大学院工学系研究科の伊藤 喜光 准教授、横山 裕大 大学院生らの研究グループは、科学技術振興機構の小林 柚子 さきがけ専任研究者(兼:理化学研究所 特別研究員)、理化学研究所の横田 泰之 専任研究員、東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所の安藤 康伸 准教授との共同研究で、厚みが単分子程度の超極薄のポリマー薄膜を合成する新しい手法を見いだしました。
固体表面においては、意図せず勝手に進行する重合反応が古くから知られています。これは、例えば電池の性能に重要な影響を及ぼすことが知られているものの実態が明確ではない薄膜(SEI被膜)の形成をはじめとした多くの材料物性に関わる重要な反応ですが、その詳細なメカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。
本研究では、電極とモノマー分子との強い相互作用をデザインすることによって、通常は反応が起こらないと考えられている低い電圧条件においても重合反応が電極表面上においてのみ進行し、厚さが単分子レベルの超極薄ポリマー膜が形成されることを見いだしました。また、その詳細な反応メカニズムを明らかにしました。この反応は、近年注目を集めている2次元ポリマーの合成や、SEI被膜の改良による電池の高性能化にとどまらず、接着剤やコーティングといった固体表面における重合反応が関わるあらゆる現象に対して新たな理解と開発指針を与えることが期待されます。
本研究成果は、2026年5月30日(米国東部夏時間)に、「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電場による非平衡反応場を利用した合成化学」(課題番号:JPMJPR21Q1)および「未来電極材料の実現に向けた多機能電気化学ナノプローブの開発」(課題番号:JPMJPR23Q4)、JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)「グリーントランスフォーメーション(GX)を先導する高度人材育成」(課題番号:JPMJSP2108)、日本学術振興会(JSPS) 科研費 基盤研究B(課題番号:JP25K01826)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(595KB)
<論文タイトル>
- “Realization of self-terminating underpotential electropolymerization by strong supramolecular monomer-electrode interaction”
- DOI:10.1021/jacs.6c03733
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