ポイント
- スピンの立体的な配列に由来する、光の偏光面がねじれる現象「トポロジカル磁気光学効果」を、磁化を持たない反強磁性体において実証しました。
- 従来、磁気光学効果の発現には外部磁場や物質の磁化が不可欠と考えられてきましたが、本研究ではこれらに依存せず、強磁性体に匹敵する大きさの効果を実現しました。
- 本成果は、巨視的な磁化を持たない反強磁性体において磁気情報を読み出す新たな手法としての応用が見込まれ、反強磁性体を基盤とした次世代の磁気記憶デバイスの実現につながることが期待されます。
東京大学 大学院工学系研究科の岡村 嘉大 助教(研究当時)、高橋 陽太郎 准教授らの研究グループは、同大学 先端科学技術研究センターの関 真一郎 教授、理化学研究所 創発物性科学研究センターの十倉 好紀 グループディレクターらとの共同研究により、スピンが立体的に配列することで生じた光の偏光面がねじれる現象「トポロジカル磁気光学効果」を、磁化を持たない反強磁性体において実証することに成功しました。
一般に磁気光学効果は、強磁性体における磁気情報の読み出し手法として広く用いられ、その大きさは磁場や磁化に比例して現れることが知られています。それに対して、本研究で扱った反強磁性体では、スピンが四面体状に配列することにより、物質中に存在する電子が量子力学的な起源を持つ大きな仮想磁場を受けることが理論的に予測されていました。今回はこの特徴を利用することで、強磁性体に匹敵するほど大きな磁気光学効果が発現することを実験的に示しました。
本成果は、磁化を持たない反強磁性体における新たな磁気情報読み出し原理を提示するものであり、反強磁性体を基盤とした高速・高密度な次世代磁気情報素子の開発への展開が期待されます。
本研究成果は、2026年5月27日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「ナノスピン構造とトポロジーがつくる光スピントロニクス(課題番号:JPMJFR212X)」、戦略的創造研究推進事業 CREST「第三の磁性体「Altermagnet」の物質設計と機能開拓(課題番号:JPMJCR23O4)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究S「磁性伝導体における新しい創発電磁誘導(課題番号:JP23H05431)」、基盤研究S「マクロな時間反転対称性の破れた反強磁性体の物質設計と電気的制御(課題番号:JP21H04990)」、基盤研究S「マルチカロリトロニクス(課題番号:JP22H04965)」、基盤研究A「スキルミオンが持つ新しい物質機能・物性現象の開拓とスキルミオニクスの創出(課題番号:JP25H00611)」、基盤研究B「Equilibrium skyrmion lattice at zero-magnetic field: Material exploration and magnetoelectric control(課題番号:JP25K00956)」、若手研究「A new material landscape of rare-earth intermetallics for exploration non-trivial topological spin textures(課題番号:JP23K13069)」、学術変革領域A「キメラ準粒子のエレクトロニクス(課題番号:JP24H02235)」、挑戦的研究(萌芽)「トポロジカル反強磁性体におけるスピンゲージ場による光物質双方向制御(課題番号:JP25K22214)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(632KB)
<論文タイトル>
- “Giant topological magneto-optical effect in noncoplanar antiferromagnet”
- DOI:10.1038/s41467-026-72889-5
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