ポイント
- 体細胞を別の種類の細胞へと直接変換するダイレクトリプログラミングを誘導する低分子化合物を予測するAI技術を開発した。
- 細胞の変換過程をシミュレーションで再現して初期、中期、後期の複数段階に分類し、それぞれの段階に適した低分子化合物の組み合わせを予測することに成功した。
- 提案手法は、再生医療分野をはじめとする細胞治療のための細胞作製の効率化や安全性向上につながることが期待される。
九州工業大学 大学院情報工学研究院の濱野 桃子 准教授らの研究グループは、名古屋大学 大学院情報学研究科の山西 芳裕 教授との共同研究により、iPS細胞を介さずに、細胞を別の種類の細胞へ直接変換する「ダイレクトリプログラミング」を誘導する低分子化合物について、その最適な組み合わせを予測する新たな手法を開発しました。
本研究グループは、体細胞を別の種類の細胞へと直接変換するダイレクトリプログラミングを誘導する低分子化合物(薬剤や化学物質など)を予測するAI技術を開発しました。ダイレクトリプログラミングでは、安全性の高い低分子化合物によって細胞変換を誘導する手法の確立が強く求められています。そこで本提案手法では、細胞変換の段階ごとに必要な低分子化合物を簡便に予測可能なAI技術を開発しました。まず、1細胞レベルの遺伝子発現データからダイレクトリプログラミングの誘導過程をシミュレーションで再現しました。次いで、細胞が変換していく過程を初期、中期、後期のように分け、段階ごとに変化する遺伝子の発現パターンを調べることで細胞変換の動的な分子メカニズムを明らかにしました。最後に、段階ごとに変化する分子メカニズムを制御する低分子化合物の組み合わせを、最適化アルゴリズムで予測することに成功しました。提案手法により、ダイレクトリプログラミングを段階的に誘導する低分子化合物を簡便に予測できるようになり、今後の再生医療分野における細胞作製の効率化や安全性向上につながることが期待されます。
本研究成果は、現地時間2026年5月18日に「Communications Chemistry」で公開されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX24LD)「化合物による細胞リプログラミング制御法の開発」(研究代表者:濱野 桃子)、大川情報通信基金「安価で安全な再生医療を拓く情報技術基盤の構築」(研究代表者:濱野 桃子)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)(JP21K18327)「AIによるデータ駆動型ダイレクトリプログラミングの創生と腫瘍化リスクの回避」(研究代表者:山西 芳裕)、科学研究費助成事業・挑戦的研究(開拓)(JP24K21338)「実験条件最適化AIによるデータ駆動型ケミカルリプログラミング技術の開発」(研究代表者:山西 芳裕)の支援を受け行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.66MB)
<論文タイトル>
- “Simulation-guided chemical direct reprogramming informed by temporal cellular conversion processes at the single-cell level”
- DOI:10.1038/s42004-026-01991-y
<お問い合わせ>
-
<JST事業に関すること>
原田 千夏子(ハラダ チカコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K's五番町
Tel:03-6380-9130 Fax:03-3222-2066
E-mail:act-xjst.go.jp
-
<報道に関すること>
九州工業大学 管理本部 総務課 広報係
Tel:093-884-3007
E-mail:pr-kouhoujimu.kyutech.ac.jp
名古屋大学 総務部 広報課
Tel:052-558-9735
E-mail:nu_researcht.mail.nagoya-u.ac.jp
科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:jstkohojst.go.jp