ポイント
- 熱可塑(かそ)性を持たない、木材由来のナノ繊維であるセルロースナノファイバー(CNF)から、新奇なプラスチック様材料の形成に成功
- CNFはその優れた特性にもかかわらず、プラスチックや金属では可能な「加熱による成形」ができず、加工の可能性を狭めることが課題となっている
- CNF表面を負電荷に改質し、イオン液体の正電荷イオンとペアを形成させることで、ナノ粒子同士の界面を選択的に熱可塑化する手法を開発
- 本成果により、CNFの集合体から、強度や熱寸法安定性に優れた部材をより高い自由で成形可能になり、将来的には車のフレームや建材といった構造用途や放熱用途への展開が期待される
大阪大学 産業科学研究所の石岡 瞬 助教、東京大学 大学院農学生命科学研究科の齋藤 継之 教授、および同大学 大学院工学系研究科、第一工業製薬、海洋研究開発機構からなる研究グループは、熱可塑性を持たない木材由来のナノ繊維であるCNFから、成形自由度の高いプラスチック様材料を形成する手法を開発しました。
CNFは、高強度、低熱膨張性、高熱伝導性などの優れた特性を持ち、密に集合(会合)させると、これらの特性を併有した高性能材料を形成できます。しかし、CNF会合体に熱を加えても、そのナノ粒子構造を維持させたまま軟化させることができない(熱可塑性を持たない)ため、従来は自由度の高い成形加工が困難でした。そこで本研究では、CNF表面を負電荷に改質し、解離性が高く、低融点の塩を形成しやすいイオン液体の正電荷イオン(カチオン)とでペアを形成させました。このCNFを昇温すると、CNF同士の界面でイオンの位置交換を伴う運動(自己拡散)が誘起され、CNF会合体が熱可塑化されます。
これによりCNFの会合体からなる粉体やシートを、さまざまな形状の部材へとより高い自由度で成形可能となり、プラスチック代替材や構造部材や、放熱部材としての応用を促進することが期待されます。
本研究成果は、2026年5月16日(日本時間)に、米国科学誌「Science Advances」(オンライン)に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「植物細胞壁のナノ分解と再会合の精密制御」(JPMJCR22L3)、同 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)「極限アスペクト比(EXAR)ナノ材料の学際的研究」(JPMJAP2310)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(科研費) 若手研究(JP25K21403、JP25K18274)、JSPS 科研費 基盤研究(B)(JP22H03786、JP23K26963)、JSPS 科研費 挑戦的研究(萌芽)(JP22K19885)、朝日ウッドテック財団 研究助成給付事業 研究Ⅱ(24-Ⅱ-05)、池谷科学技術振興財団 単年度研究助成(0371007-A)の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(752KB)
<論文タイトル>
- “Thermoforming nanoparticle aggregates via interfacial ionic self-diffusion”
- DOI:10.1126/sciadv.aeb3281
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