ポイント
- ミリ秒スケールの光パルスの繰り返し照射により、磁気メモリーや磁気センサーに用いられる磁気トンネル接合(MTJ)を、約1.7秒で実用的な性能に到達させる超高速熱処理技術を実証
- 従来の熱処理では、MTJの結晶化と元素拡散を適切に制御し、実用的な性能を得るために熱処理炉による数十分〜数時間の過熱が必要だった
- スピントロニクスデバイスの製造プロセスの高速化・低消費エネルギー化につながり、次世代メモリーや高感度磁気センサー、さらにはフレキシブル基材上のスピン力学センサーの量産技術への展開に期待
大阪大学 産業科学研究所の今井 亜希子 助教、千葉 大地 教授(兼 東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター センター長)らの研究グループは、荒木 徹平 准教授、関谷 毅 教授、同大学 超高圧電子顕微鏡センターの山﨑 順 教授らと共同で、フラッシュランプアニール(閃光熱処理)と呼ばれるミリ秒スケールの光パルスを用いた熱処理手法により、磁気メモリーや磁気センサーに用いられる代表的なスピントロニクスデバイスである磁気トンネル接合(MTJ)を、約1.7秒で実用的な性能に到達させることに成功しました。
フラッシュランプアニールは半導体分野などで知られる技術ですが、本研究ではこれをMTJに適用し、短時間の非平衡加熱によって機能発現を実現しました。MTJの熱処理では、デバイスを構成する多層ナノ薄膜(ナノは1メートルの10億分の1)の結晶化と元素拡散の制御が重要であり、従来は数十分〜数時間に及ぶ長時間の加熱によって最適化されてきました。本手法により、デバイス形成に要する処理時間を、最大で数千分の1まで大幅に短縮できることを示しました。
本成果は、スピントロニクスデバイスの製造プロセスの高速化・低消費エネルギー化につながるとともに、次世代メモリーや高感度磁気センサー、さらにはフレキシブル基材上に形成するスピン力学センサーなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「npj spintronics」(オンライン)に、2026年5月12日(火)(日本時間)に掲載されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR20C6)、同 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP産学共同(本格型)(課題番号:JPMJTR233A)、同 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)(課題番号:JPMJPF2115)、JSPS 科学研究費補助金(助成番号:JP21K18827およびJP23H001830)、文部科学省 次世代X-nics半導体創生拠点形成事業(課題番号:JPJ011438)およびスピントロニクス学術研究基盤と連携ネットワーク拠点の支援を受けて行われました。
本研究の一部は、文部科学省(MEXT) ナノテクノロジー・プラットフォーム・プログラム「先端特性評価ナノテクノロジー・プラットフォーム」(助成番号:JPMXP09A21OS0030)および文部科学省(MEXT) ARIMプロジェクト(助成番号:JPMXP1222OS0039)の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(613KB)
<論文タイトル>
- “Ultrafast flash lamp annealing of magnetic tunnel junctions”
- DOI:10.1038/s44306-026-00145-z
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