理化学研究所,神戸大学,九州大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年4月30日

理化学研究所
神戸大学
九州大学
科学技術振興機構(JST)

命の始まりは父母ゲノムの「別居」から

~父母ゲノム間の競合が受精卵の発生を助ける~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 染色体分配研究チームの京極 博久 客員研究員(神戸大学 大学院農学研究科 准教授)、北島 智也 チームディレクター、フィジカルバイオロジー研究チームの柴田 達夫 チームディレクター、無細胞タンパク質合成研究チームの清水 義宏 チームディレクター、生命医科学研究センター 疾患エピゲノム遺伝研究チームの井上 梓 チームディレクター、九州大学 大学院医学研究院の原田 哲仁 教授らの共同研究グループは、受精卵において母と父のゲノムが2つの前核に分かれて「別居」することが、その後の正常な胚発生に重要であることを発見しました。

本研究成果は、生命の最初期における発生の仕組みの理解を深めるとともに、不妊治療における受精卵の発生能力の理解に貢献すると期待されます。

哺乳類の受精卵では、雌性前核と雄性前核という2つの核が形成され、母親由来と父親由来のゲノムが最初の細胞分裂まで別々に保持されます。しかし、父母ゲノムが離れて存在する生物学的意義は明らかではありませんでした。

共同研究グループはマウスを用いて、父母ゲノムを人工的に1つの前核にまとめた受精卵を作製しました。この父母同居型の前核はサイズが巨大化する一方で、ゲノムのヒストン修飾レベルが全体的に低下し、その後の胚発生能力も低下することが分かりました。さらに前核のサイズを制御する因子は細胞質中に存在し、2つの前核はこの因子を奪い合うことでお互いの部屋をコンパクトに抑え、自身のヒストン修飾を維持しやすくすることが明らかになりました。

本研究は、科学雑誌「Nature」オンライン版(現地時間2026年4月29日付)に掲載されました。

本研究は、理化学研究所 運営費交付金(生命機能科学研究、理研 新領域開拓課題「長時間分子生物学(領域代表者:北島 智也)」)で実施し、文部科学省 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「動的な生殖ライフスパン:変動する生殖細胞の機能と次世代へのリスク(領域代表者:北島 智也、JP23H04947)」「細胞競合における細胞間相互作用を計測するための空間オミクス技術開発(研究代表者:原田 哲仁、JP21H05292)」「エピゲノムによる発生保証機構(研究代表者:井上 梓、JP25H01355)」、同 学術変革領域研究(B)「初期胚が持つ染色体分配異常へのリスクマネジメント(研究代表者:京極 博久、JP25H01445)」、同 新学術領域研究(研究領域提案型)「染色体イメージングによる卵子インテグリティの予見(研究代表者:北島 智也、JP18H05549)」「核サイズに制御された全能性獲得メカニズムの解明(研究代表者:京極 博久、JP20H05376)」「受精卵が全能性を維持するために染色体分配異常から回復するメカニズムの解明(研究代表者:京極 博久、JP22H04674)」「全能性獲得機構の解明のためのmulti-omics技術の開発(研究代表者:原田 哲仁、JP20H05368)」「細胞核・クロマチン構造のダイナミクスと遺伝子制御(研究代表者:木村 宏、JP18H05527)」「空間マルチオミクスでアプローチする初期胚における細胞運命決定機序の理解(研究代表者:大川 恭行、JP22H04676)」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究(A)「人工動原体の構築による染色体分配の機構の解明(研究代表者:北島 智也、JP25H00981)」「全細胞オミクスによる骨格筋組織を構築するシステムの解明(研究代表者:大川 恭行、JP20H00456)」、同 基盤研究(B)「哺乳類卵母細胞における紡錘体二極化の機構の解明(領域代表者:北島 智也、JP21H02407)」、同 若手研究「細胞の自律運動と協同的集団運動のアクティブマター物理学(研究代表者:多羅間 充輔、JP19K14673)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「顕微操作技術による初期胚の不安定なゲノムの分配システムの解明(研究代表者:京極 博久、JPMJPR20K4)」「組織特異的ゲノム構造の再構築技術の開発(研究代表者:原田 哲仁、JPMJPR19K7)」、同 創発的研究支援事業「初期胚が持つ特殊な複製様式の意義とメカニズムの解明(研究代表者:京極 博久、JPMJFR2338)」「ヒストン修飾を基軸とした卵子プログラミング仮説の検証(研究代表者:井上 梓、JPMJFR2335)」、日本医療研究開発機構(AMED) BINDS(JP22ama121017)、文部科学省 共同利用・共同研究システム形成事業「学際領域展開ハブ形成プログラム(JPMXP1323015486)」の助成を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Cytoplasmic competition between separate parental pronuclei in zygotes”
DOI:10.1038/s41586-026-10417-7

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