理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年4月27日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

傷害が誘導する植物再生の仕組み

~熱ストレス応答因子HSFA1が細胞リプログラミングを制御~

理化学研究所(理研) 環境資源科学研究センター 細胞機能研究チームのダンカン・コールマン 特別研究員(研究当時、現 客員研究員)、杉本 慶子 チームディレクターらの国際共同研究グループは、傷害が植物の再生を誘導する新たな仕組みを発見しました。本研究成果は、植物の再生の理解を深めるとともに、穀物や野菜、果樹などにおける再生・育種技術の高度化に貢献すると期待されます。

植物は動物の体と同じように、さまざまな役割を持った細胞が集まってできています。こうした植物では、気候条件や害虫による被害を受けて傷つくと、その周辺の細胞が担っていた役割(分化状態)を変える「細胞リプログラミング」によって、葉や茎などの器官を再生する能力を持っています。この高い再生能力は植物の特徴の1つですが、傷害という環境刺激がどのように細胞リプログラミングを引き起こすのか、その分子メカニズムは解明されていませんでした。

今回、国際共同研究グループは、主に猛暑などの高温環境にさらされた際に生じる熱ストレス応答に関わる転写因子HSFA1が、傷害に応答して細胞リプログラミングを誘導する中心的な役割を担うことを明らかにしました。さらに、HSFA1はWIND1、PLT3、ZAT6などのリプログラミング関連因子を直接活性化することが分かりました。これにより、傷害シグナルがどのように転写ネットワークを立ち上げ、細胞のリプログラミングを引き起こすのかが明らかになりました。本研究は、熱ストレス応答因子として知られてきたHSFA1が植物再生の制御において中核的に機能することを示し、環境応答と発生制御を結び付ける新たな分子基盤を提示するものです。

本研究は、科学雑誌「The Plant Cell」オンライン版(現地時間2026年4月22日付)に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 若手研究「Molecular analysis of novel wound-induced regulators of shoot regeneration in Arabidopsis(研究代表者:ダンカン・コールマン、JP22K15150)」、同 新学術領域研究(研究領域提案型)「傷害ストレス誘導性カルスの幹細胞新生メカニズム(研究代表者:岩瀬 哲、JP20H04893)」、同 学術変革領域研究(B)「プラスチド相転換を制御する因子の機能解析(研究代表者:岩瀬 哲、JP22H05075)」、同 学術変革領域研究(A)「不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構(研究代表者:松下 智直、研究分担者:児玉 豊、JP20H05905)」「植物の環境レジリエンスを支える傷害修復機構(研究代表者:杉本 慶子、JP20H05911)」、同 特別研究員奨励費「植物メリステムで細胞増殖をエピジェネティックに制御する仕組みの解明(研究代表者:杉本 慶子、JP23KF0089)」、同 基盤研究(B)「植物の器官再生を支える細胞リプログラミング制御機構の解明(研究代表者:杉本 慶子、JP24K02051)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「植物分子の機能と制御」研究領域「低分子化合物から読み解く植物細胞の分化全能性(研究代表者:岩瀬 哲、JPMJPR20D2)」、同 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)「植物の誘導リプログラミングに立脚した新規バイオエコノミー基盤の創出(研究代表者:杉本 慶子、JPMJAP2306)」、同 革新的GX技術創出事業(GteX)バイオものづくり領域「先端的植物バイオものづくりの基盤の構築(研究代表者:大熊 盛也、主たる共同研究者:杉本 慶子、JPMJGX23B0)」の助成を受け、文部科学省 国費外国人留学生制度(採用対象者:ダンカン・コールマン)(研究当時)、JSPS 外国人特別研究員制度(採用対象者:マックス・ミネ)による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Wounding activates the HSFA1 transcription factors to promote cellular reprogramming in Arabidopsis”
DOI:10.1093/plcell/koag124

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