ポイント
- 約70年にわたり仮定されてきた磁石の「反転試行時間」を、初めて実験的に決定しました。
- 長年1ナノ秒程度の定数と仮定されてきた反転試行時間が、ナノ磁石の形状や材料に依存して変化する設計可能なパラメーターであることを示しました。
- 本成果は、ハードディスクや磁気メモリー、確率計算素子などの設計を高精度化し、次世代磁気デバイス開発の基盤となります。
磁石のN極/S極の向きは、エネルギーの「丘」を越えることで切り替わります。この現象はアレニウス則で記述され、ハードディスクや磁気メモリーの設計に用いられています。しかしアレニウス則に含まれる「どれくらいの頻度で丘を越えようと試みているか」を表す「反転試行時間」の実験的な決定は極めて困難で、約70年にわたり1ナノ秒程度と仮定されていました。
今回、東北大学の金井 駿 准教授、早川 佳祐 大学院学生(当時)、Mehrdad Elyasi(エリヤシ・メフルダード)准教授、Gerrit Bauer(ゲリット・バウアー)教授、深見 俊輔 教授らの研究チームは、温度を変えずにアレニウス則を調べる新しい実験・解析手法を確立し、ナノ磁石の熱ゆらぎを室温で精密に測定しました。その結果、磁石が向きを変えようとする反転試行時間を世界で初めて実験的に決定しました。さらに、用いた試料では磁石内部で生じるスピンの集団的挙動がスイッチング過程に影響し、この反転試行時間が従来の予想よりも10倍以上長いことを明らかにしました。本成果は、磁気メモリーや確率計算素子などの設計を高精度化し、次世代磁気デバイス開発の基盤を提供するものです。
本成果は2026年4月21日(日本時間)付で、材料科学分野の専門誌「Communications Materials」に掲載されました。
本研究の一部は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR21B2)、同 CREST(課題番号:JPMJCR19K3)、JSPS 科研費(課題番号:JP19H05622、JP19H00645、JP20H02178、JP21K13847、JP22H04965)、文部科学省 次世代X-nics半導体創生拠点形成事業(体系的番号:JPJ011438)、東北大学 新領域創成のための挑戦研究デュオなどの支援を受けて行われたものです。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Stochastic switching time constant and instability in nanomagnets”
- DOI:10.1038/s43246-026-01149-2
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