ポイント
- 環境によって“恋の合図”の効き方が変わることを発見
分裂酵母の性フェロモンは、配列だけでなく、周囲の環境条件によってもその働きが変化することを明らかにしました。 - 失われたように見える機能が、別の変異によって補われることを解明
一部の変異は単独では機能を弱めますが、別の変異が加わることでその影響が緩和される「進化的バッファリング」の仕組みを示しました。 - シグナル分子の進化に新たな見方を提示
環境条件と変異の組み合わせによって、機能を保ちながら多様化する進化経路が存在しうることを明らかにしました。
九州工業大学 大学院情報工学研究院の清家 泰介 准教授は、理化学研究所 生命機能科学研究センターの古澤 力 チームディレクターらとの共同研究により、分裂酵母が交配相手を探す際のシグナル、いわば“恋の合図”である「性フェロモン」の働きが、周囲の環境によって変化することを解明しました。さらに、うまく働けなくなる“合図”も別の変異がその機能低下を補うことで、交配を成功させて次世代を残し、そして進化の可能性を広げていることを明らかにしました。
本研究では、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの性フェロモンに着目し、153種類のフェロモン変異体を用いてその機能を定量的に解析しました。その結果、通常の条件では十分に働かない一部のフェロモン変異体が、環境条件、特にpHの違いにより活性化されることを見いだしました。さらに、別の変異との組み合わせがその機能を補い、フェロモンが機能を保ったまま多様化しうる可能性も示されました。これらの成果は、短いペプチドシグナル分子がどのように進化するのかを理解するうえで、新しい視点を与えるものです。今後、細胞間コミュニケーションの進化原理の解明につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年4月21日付(現地時間)で英国科学雑誌「Communications Biology」に掲載されました。
本研究は科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR24N9)および日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 科研費(JP19K16197、JP20H04790)の支援を受けたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.03MB)
<論文タイトル>
- “Context-dependent activation and evolutionary buffering of a mating pheromone in fission yeast”
- DOI:10.1038/s42003-026-10058-6
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