NIMS(物質・材料研究機構),科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年4月16日

NIMS(物質・材料研究機構)
科学技術振興機構(JST)

熱電デバイスを自在に設計するAI「TEGNet」を開発

~性能予測を従来比約1万分の1の時間に短縮、開発プロセスを革新~

ポイント

持続可能な社会の実現に向け、温度差がある場所に設置するだけで半永久的に発電できる熱電発電技術が注目されています。熱電発電デバイスの高性能化には、材料開発に加えて寸法・構造の最適設計が不可欠です。一方、従来の数値解析(有限要素法)では、条件変更のたびに計算を繰り返す必要があり、計算負荷が大きく、設計探索の大規模化・高速化が難しいという課題がありました。

物質・材料研究機構 ナノアーキテクトニクス材料研究センター 熱エネルギー変換材料グループの森 孝雄 グループリーダーらの研究グループは、この課題を解決するため、熱電発電デバイスの設計を高速に最適化できるAIモデル「TEGNet」を開発しました。TEGNetは材料の特性や素子の寸法・条件を入力すると、デバイス内で生じる電圧や熱の流れをすばやく予測し、発電出力と変換効率を高精度で見積もることができます。本技術の最大の特長は、材料ごとに学習・独立させたTEGNetモデルを、物理法則に基づいてブロックのように自在に組み合わせられる「組立可変」な点にあります。このアプローチにより、特性の異なる材料をつなぎ合わせた複雑な構造のデバイスであっても、性能を迅速かつ網羅的に探索し、最適化することが可能になりました。実証として、Mg-Sb(マグネシウム-アンチモン)系材料を用いた2種類のデバイス設計をTEGNetにより最適化し、そのデバイスを試作・評価した結果、実用的な温度条件で最大9.3パーセントおよび8.7パーセントの高い変換効率を達成しました。

本研究成果は、従来の数値シミュレーションに依存した熱電発電器設計に対し、AIを中核技術とする次世代設計手法を提示するものです。近年、多くのAI研究が材料レベルの最適化に焦点を当ててきたのに対し、本研究はデバイスレベルの最適化を直接対象としている点に大きな特長があります。これにより、材料設計とデバイス設計を相補的に高度化することが可能となり、熱電分野のみならず、エネルギー分野全体におけるAI活用のさらなる発展が期待されます。

本研究成果は、「Nature」誌にてアメリカ東部時間2026年4月15日にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業 大規模プロジェクト型 技術テーマ「センサ用独立電源として活用可能な革新的熱電変換技術」(研究開発代表者:森 孝雄)の支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Composable neural emulators accelerate thermoelectric generator design”
DOI:10.1038/s41586-026-10223-1

<お問い合わせ>

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