ポイント
- イメトレ中の脳内状態を、AIを使って可視化して訓練
- ・これまでは本人もトレーナーも、実際の脳状態を知ることができませんでしたが、ブレイン・コンピューター・インターフェース(Brain–Computer Interface;BCI)を利用することでリアルタイムに可視化できました。
- ・脳内に電極を埋め込むことなく、ウェアラブルセンサー(脳波計)とAIだけで実現できた点が画期的です。
- 実際に運動せず、イメトレだけで運動能力が向上
- ・これまでは、ジムや競技場、楽器やキーボードなど、実際にトレーニングするための「場所」や「道具」が必要で、訓練環境を整備する必要がありました。
- ・時間や場所にとらわれず、好きなときに、好きな場所で、BCIを使って脳の能力を拡張できるようになりました。
- 体の動きを司るコントローラーである脳を直接鍛えることに成功
- ・これまでのテクノロジーを活用したトレーニングでは、電極を体に貼って計測する心電図・心拍計測あるいは筋電図を利用したものがありましたが、今回は「脳」を対象にしたトレーニングを提案しました。
- ・全身の筋肉に司令を送る脳そのものの活動を訓練すると、実際のパフォーマンスが向上することを示した点が画期的です。
慶應義塾大学 理工学部 生命情報学科の岩間 清太朗 専任講師(有期)、牛場 潤一 教授、および松岡 敦也(修士2年、研究当時)らの研究チームは、ブレイン・コンピューター・インターフェース(Brain–Computer Interface;BCI)を活用し、実際の体の動きを伴わない「運動イメージ訓練(いわゆるイメトレ)」中に、自分の脳状態を可視化し、思念を操る練習を行うことで、脳状態の切り替え能力が向上し、実際の運動パフォーマンスが改善することを明らかにしました。
BCIは、本人には自覚できない「脳状態」を可視化し、それをリアルタイムにユーザーへフィードバックすることで脳活動の自己調節を可能にする技術です。同研究チームはこれまでに、脳卒中後の重度まひの機能回復を実現し、大学発スタートアップ「(株)LIFESCAPES」を通じてBCIを医療機器化して、全国60の医療機関への導入を進めてきました。本研究は、病気やけがをしていない健常成人の運動能力をもBCIによって向上させることができることを示し、脳の内部で起きている神経回路の切り替わりの様子を可視化し、詳細な分析をした画期的な成果です。
今後は、対象者や課題を広げた検証、効果の持続性や個人差の評価、実際の運動支援場面での有効性の確認を進め、医療・ヘルスケア・人間拡張・スポーツ分野での応用を目指します。
本成果は、2026年4月10日付(現地時間)で「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ、JPMJPR23I1(パフォーマンスを安定化する脳状態の自己調節訓練法の確立、研究代表者:岩間 清太朗)、JST ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標1 身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放、JPMJMS2012(非侵襲BMIによる精神・身体状態の推定、課題推進者:牛場 潤一)、日本学術振興会(JSPS) 科研費、JP20H05923(脳卒中後の機能回復臨界期における神経回路操作、代表:牛場 潤一)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(509KB)
<論文タイトル>
- “Brain-computer interface-based neurofeedback training enables transferable control of cortical state switching in humans”
- DOI:10.1073/pnas.2525769123
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