工学院大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年4月7日

工学院大学
物質・材料研究機構(NIMS)
京都大学
名古屋大学
日本電子株式会社
東北大学
島根大学
岡本硝子株式会社
科学技術振興機構(JST)
J-PARCセンター
高輝度光科学研究センター

ガラスにならない酸化アルミニウムを透明な非晶質の塊に

~5配位ピラミッドと6配位八面体から成る超高密度構造と結晶を超える誘電率を高圧力で実現~

ポイント

工学院大学と物質・材料研究機構(以下「NIMS」)を中心とする研究チームは、京都大学、名古屋大学、日本電子株式会社、東北大学、島根大学、岡本硝子株式会社をはじめ、国内複数機関との共同研究により、従来「ガラスにならない」と考えられてきた単一成分酸化物である酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)について、室温の高圧プロセスにより、ミリメートルサイズの透明な非晶質(アモルファス)の塊(バルク)を合成することに成功しました。得られた試料が、高い熱伝導率や硬さを示すことに加え、誘電率が約11.3と、代表的な結晶相であるα‐Al2O3(サファイア)の誘電率(約10)を上回ることを示しました。

アルミナは化学的安定性や絶縁性に優れることから、電子材料やコーティングなどで広く用いられ、産業分野を支えている基幹材料です。一方で、ガラス科学の観点ではアルミナはガラス形成能を持たず、通常の溶融法ではガラス状態のアルミナ(非晶質アルミナ)を塊として得ることができませんでした。

今回、研究チームは、電気化学的に作製した多孔質非晶質アルミナ薄膜(アルマイト)に対して、室温で高圧(9.4 ギガパスカル:9万4千気圧)を印加することで、粒子界面や孔を消失させ、透明なバルク体へと一体化させました。固体核磁気共鳴分光、放射光X線回折、中性子回折、構造モデリングを組み合わせた解析により、非晶質アルミナの主要構造単位が、八面体から酸素頂点が1つ欠けたような5配位ピラミッド(AlO5)であること、加圧によってAlO5の変形とAlO6八面体の増加が進み、両者が稜共有で連結した、通常の非晶質には見られない高密度な構造が形成されることを明らかにしました。これにより、電場に対して応答しやすい局所構造が形成され、高い誘電率の発現につながるというモデルを提案しました。

本研究で示した「高圧力で、原子の配位環境(短距離構造)とその連結性(中距離構造)を制御し、物性を引き上げる」概念は、一般化できる可能性が高く、今後、誘電特性に加えて熱・機械特性を含む総合的な設計指針の確立を目指します。

本研究は、工学院大学 先進工学部 応用化学科の橋本 英樹 准教授と大倉 利典 教授、NIMS マテリアル基盤研究センターの小野寺 陽平 主任研究員とナノアーキテクトニクス材料研究センターの宮川 仁 主任研究員らの研究チームが中心となって、京都大学 大学院工学研究科の増野 敦信 特定教授、名古屋大学 大学院工学研究科の高田 尚記 教授、日本電子株式会社の矢澤 宏次 氏、東北大学 多元物質科学研究所の吉井 丈晴 准教授、島根大学 材料エネルギー学部の尾原 幸治 教授、岡本硝子株式会社の川田 耕司 主席技師をはじめとする国内複数機関(岡山大学、東京理科大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK))の研究者らと連携して実施されました。

本研究成果は、2026年4月7日に米国化学会「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ 〔未来材料〕物質探索空間の拡大による未来材料の創製(JPMJPR22Q7、JPMJPR22Q4、JPMJPR23QA)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(JP19H05790、JP19K05648、JP22K04950、JP23K17711、JP24K17502、JP24K01167)、JSPS 学術変革領域研究(A)「超秩序構造が創造する物性科学」(JP20H05879、JP20H05880、JP20H05881、JP20H05878)、各種民間財団の支援を受けて実施されました。本研究の一部は、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の支援を受けました。NMR測定は、文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM:Advanced Research Infrastructure for Materials and Nanotechnology in Japan)」の支援(JPMXP1222NM0090、JPMXP1223NM0075、JPMXP1224NM0114)を受けて、放射光実験は高輝度光科学研究センターによるSPring-8 BL04B2(2022B1363、2023A1344、2023B1237、2024B1527)にて、中性子回折実験はJ-PARC・MLFのBL21の長期課題(2022L0202)で実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Bulk Amorphous Alumina: The Density-Driven Interplay of Pentahedral Pyramids and Octahedra for High Dielectric Permittivity”
DOI:10.1021/jacs.5c22344

<お問い合わせ>

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