ポイント
- 海洋プランクトンの浮遊性有孔虫が、現在進行中の地球温暖化に対してどう応答するかを実験的に調べ、高い温暖化耐性を示すことを明らかにしました。
- 共生藻について、共生状態と自由生活状態を比較すると、共生状態のほうがより高温まで耐えられることが明らかになり、宿主細胞内が、共生藻にとって避難所のような役割を果たす可能性を示しました。
- 海洋の低次生態系を支えるプランクトンの温度耐性を理解することは、さらなる温暖化地球における海洋生態系の姿を予測することに貢献すると期待されます。
東京大学 大気海洋研究所の高木 悠花 准教授と、千葉大学 大学院融合理工学府 地球環境科学専攻の関根 真 大学院生による研究グループは、単細胞の動物プランクトンである浮遊性有孔虫と渦鞭毛藻(うずべんもうそう)との光共生が、共生藻の温暖化耐性を高めることを明らかにしました。
本研究では、渦鞭毛藻を細胞内に共生させる浮遊性有孔虫Trilobatus sacculiferを異なる温度条件下で飼育するとともに、本種から単離した共生藻Pelagodinium béiiの単離培養株を用いて同様の温度実験を行うことで、単離状態(自由生活状態)よりも共生状態の方が高温まで耐えられることを明らかにしました。これまで、光共生系の高温耐性に関する研究は、造礁性サンゴを対象とした研究が中心的で、他の分類群の知見は極めて限られていました。本研究では、外洋域に生息するプランクトンの光共生系を対象として実験を行い、浮遊性有孔虫の光共生系では、「白化」と呼ばれる現象は確認されなかったこと、むしろ共生藻にとっては、光共生することが温暖化の悪影響を回避する「避難所」のような役割を果たしている可能性を初めて示しました。このようなプランクトンの環境応答を理解することは、将来の地球温暖化に対して海洋生態系がどう応答していくかを理解することに貢献します。
本研究成果は、2026年3月31日付(現地時間)で「Symbiosis」に掲載されました。
本研究は、JSPS 科学研究費助成事業「若手研究(課題番号:JP21K14896)」、「基盤B(課題番号:JP24K01832)」、JST 創発的研究支援事業(JPMJFR2176)、クリタ水・環境科学振興財団 国内研究助成(22B048、23K017)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Photosymbiosis and thermal tolerance: Insights from planktonic foraminifera and their dinoflagellates”
- DOI:10.1007/s13199-026-01122-0
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