京都大学 大学院工学研究科 高分子化学専攻の黒田 啓太 博士後期課程学生、大内 誠 教授のグループは、ラジカル重合中に複数の異性化反応を連続的に起こす「カスケード型ラジカル異性化重合」により、主鎖にアミド結合を周期的に含む新たな高分子を合成することに成功しました。付加重合によって得られる高分子は通常は炭素–炭素結合のみからなる主鎖構造を有しますが、今回見いだした重合はアミド結合[–CONH–]やエーテル結合[R–O–R’]を主鎖に導入できる新しい高分子合成反応であり、分子設計を工夫することで分解性の付与も可能です。本異性化重合で得られる高分子は従来の重合では得られなかった主鎖構造を有しており、機能性材料や環境調和型材料の開発につながる可能性があります。
ビニールモノマーの付加重合によって得られる高分子は、主鎖が炭素–炭素結合のみで構成されるため、優れた安定性を示す一方で、主鎖構造の多様化や分解性の付与が難しいという課題があります。主鎖に酸素や窒素などのヘテロ原子を導入できれば、高分子の物性や機能を大きく拡張できると期待されています。これまでに、ラジカル重合や他の付加重合に対して、成長活性種が側鎖に異性化する「異性化重合」は見いだされてきましたが、重合中に複数の異性化反応を連続して進行させ、それによって生成する高分子の主鎖構造を多様化した例はほとんどありませんでした。
本研究では、側鎖のアミド基が「アリールスルホニル基」と「ラジカル安定化基を含むアルキル基」で置換されたアクリルアミドモノマー1を設計しました。このモノマーを用いるとラジカル重合中に①ラジカルSmiles転位、②二酸化硫黄の脱離(SO₂脱離)、③1,5-水素移動、という複数の異性化反応が連続的に起こります。このカスケード反応によって生成したラジカルはモノマーの二重結合に付加し、付加と複数の異性化反応を繰り返しながら主鎖にアミド結合を周期的に導入した高分子が生成します。構造を拡張することも可能であり、アミド基の置換基構造を変えることで得られる高分子のガラス転移温度を制御可能です。また、アミド基に加えてエーテル結合も主鎖に導入することで、酸性条件で主鎖を分解できるポリマーを設計できることも明らかにしました。本研究で開発した異性化重合は、従来の付加重合では困難であった主鎖構造の設計を可能にするものであり、高分子材料の設計自由度を大きく拡張します。今後、高機能材料の創出に加え、分解性を有する持続可能な高分子材料の開発にもつながることが期待されます。
本研究成果は、2026年3月23日(現地時間)に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR23L1)、文部科学省 科学研究費補助金(JP24H00052、JP23KJ1379)の支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Cascade Radical Isomerization Polymerization to Engineer Polymer Backbones”
- DOI:10.1021/jacs.5c21559
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