九州大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年3月25日

九州大学
科学技術振興機構(JST)

一重項分裂(SF)により増幅した励起子の効率的な捕集に成功

~量子収率130パーセントを達成する鍵分子を発見、太陽電池の限界突破に道~

ポイント

太陽光エネルギーの効率的な活用戦略として、光吸収により生じる一重項励起子が分裂して2つの三重項励起子が形成されるSFが注目され、世界中で研究されています。分裂後の三重項励起子から電子を取り出せば、原理的に光電変換効率200パーセントを達成できるものの、分裂前の一重項からのエネルギー損失過程が競合するため、変換効率を最大化することは困難です。そこで分裂後に生じる励起三重項エネルギーを高効率に受け取る分子が求められていました。

今回、九州大学 大学院工学研究院の君塚 信夫 教授(現 ネガティブエミッションテクノロジー研究センター 特任教授/名誉教授)、佐々木 陽一 准教授、同大学 工学部のSifuentes-Samanamud Percy Gonzalo(シフエンテス・サマナムド・ペーシー・ゴンザロ) 学部生(当時)、同 大学院工学府の正岡 亜樹 大学院生、マインツ大学のSauer Adrian(ザワー・アドリアン) 大学院生らは、d電子系金属錯体であるモリブデン錯体をエネルギーアクセプターとして活用し、SF後の励起子からのスピン状態選択的なエネルギー移動を、溶液系において実現しました。モリブデン錯体の近赤外発光を用いた定量評価より、一般的な三重項増感の限界を超えた約130パーセントのモリブデン励起二重項収量を確認するとともに、SF後のスピン量子もつれ三重項対(Triplet pair)からの三重項エネルギー移動過程の寄与を明らかにしました。これらの結果はモリブデン錯体のようなd電子系金属錯体が、SF後の増感効率向上に適した分子群であることを示しており、将来的に従来限界を超えた効率を示す太陽光発電や発光ダイオードへの応用が期待されます。

本研究成果は、2026年3月25日(日本時間)に、米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX24D8)、JST 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)(JPMJAP2508)、日本学術振興会(JSPS) 科研費 (JP20H05676、JP24K17745)、稲盛財団 研究助成、the Priority Program SPP 2102 “Light-controlled reactivity 7 of metal complexes”(grant number HE2778/15-2)、DAAD(ISAP project 57668110)の支援を受けたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Exploring Spin-State Selective Harvesting Pathways from Singlet Fission Dimers to a Near-Infrared-Emissive Spin-Flip Emitter”
DOI:10.1021/jacs.5c20500

<お問い合わせ>

前に戻る