ポイント
- 光を当てると分解し、別の光を当てると分解が止まる“賢い素材”を開発。
- 材料を「丈夫で長く使える」ようにすると分解しにくくなり、「分解しやすく」すると耐久性が落ちるという根本的な課題があったが、丈夫さと分解性を両立する仕組みを分子レベルで解明。
- 材料内部に“動く分子の輪”のような構造(可動性架橋)を導入することで、光による制御で、酵素分解の進行を可逆的に切り替えることに成功。
- この技術は、環境に配慮した次世代材料の開発につながるだけでなく、医療材料や情報記録材料など、さまざまな分野への応用に期待。
大阪大学 大学院理学研究科の大学院生 Zhou Xin (シユウ・シン) さん(博士後期課程)、Liu Jiaxiong(リュー・ジャーショー) 特任研究員(常勤)、山岡 賢司 助教、髙島 義徳 教授らの研究グループと大阪大学 大学院工学研究科の菅原 章秀 助教、宇山 浩 教授らの研究グループ、さらに山形大学 大学院有機材料システム研究科の松葉 豪 教授らの研究グループは、光を当てるだけで分解の進み方を切り替えられる新しい高分子材料を開発しました。
プラスチックなどの高分子材料は、「丈夫で長持ちする」ことが求められる一方で、「不要になったら分解できる」ことも重要です。しかし、これらは丈夫にすると分解しにくくなり、分解しやすくすると弱くなってしまうため通常、両立が難しい性質でした。
今回開発した材料は、この課題を解決する新しい仕組みを持っています。それは、材料の内部に“動く分子の輪”のような構造を組み込こんだことです。この輪が高分子の鎖を包み込んだり、外れたりすることで、分解を進める酵素が近づきやすくなったり、逆に近づきにくくなったりします。
さらに、この分子の動きを光でコントロールできるようにしました。特定の波長の光を当てると分解が進み、別の波長の光を当てると分解が抑えられます。つまり、“分解のスイッチ”を光で操作できる材料を実現しました。
また、光を当てる場所を選べば、その部分だけ分解させることも可能です。実験では、材料の表面にQRコードを光で書き込み、酵素によって分解させることで、その模様を浮かび上がらせました。
この技術は、環境に配慮した次世代材料の開発につながるだけでなく、医療材料や情報記録材料など、さまざまな分野への応用が期待されます。
本研究は、「長く使える強さ」と「必要なときに分解できる機能」という、これまで両立が難しかった性質を同時に実現する、新しい材料設計の考え方を示す成果です。
本研究成果は、2026年3月25日(日本時間)に米国化学会誌「ACS Nano」(オンライン)に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「デュアル分解制御技術を駆使した精密材料科学」(JPMJCR22L4)の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(635KB)
<論文タイトル>
- “Light-Programmable Polyester Networks with Movable Cross-links for On-Demand Enzymatic Degradation”
- DOI:10.1021/acsnano.5c19646
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