ポイント
- ヒト細胞およびマウス組織のtRNAにおいて、脱硫型修飾(xm5h2U)が内在的に生成されていることを初めて実証しました。
- 脱硫型修飾は特定のtRNAのアミノアシル化効率とコドン解読能を低下させ、たんぱく質合成効率を制御することを明らかにしました。
- クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析により、脱硫型修飾を有するtRNAがリボソーム上で対応するコドンを認識しにくくなることを明らかにしました。
東京大学 大学院工学系研究科の莫 喩楓(Yufeng Mo) 大学院生と鈴木 勉 教授の研究グループは、脱硫(元素記号がSである、硫黄を含む分子が離脱する反応)したtRNA修飾による翻訳制御機構を解明し、その機構が酸化ストレス応答と関連する可能性を示しました。
たんぱく質合成においてアダプター分子として機能するtRNAのアンチコドンには、さまざまな化学修飾が施されており、翻訳の正確性と効率を適切に制御しています。tRNAには多様な化学修飾が存在しますが、その中でもアンチコドンの1塩基目に位置する5-メチル-2-チオウリジン誘導体(xm5s2U)は、リボソーム上でmRNAのコドンを正確に解読するうえで重要な役割を担っています。
本研究では、ヒト細胞およびマウス組織において、tRNAのxm5s2U修飾が細胞内で酸化的に脱硫され、4-ピリミジノン誘導体(xm5h2U)へと変換されることを明らかにしました。脱硫したtRNAではアミノアシル化効率が著しく低下し、さらにリボソーム上でのmRNAコドンの解読能も失われることが分かりました。その結果、たんぱく質合成効率が低下することが示されました。
加えて、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析により、脱硫型修飾を有するtRNAがリボソーム上で対応するコドンを認識しにくくなることを明らかにしました。
これらの成果は、酸化ストレス条件下において、tRNA修飾の脱硫を介して翻訳を制御する新たな分子機構の存在を示すものです。
本研究成果は、2026年3月10日(英国時間)に、「Nature Communications」に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業の基盤研究(S)「RNA エピジェネティックスと高次生命現象」(代表:鈴木 勉、JP26220205)および科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ERATO「鈴木RNA修飾生命機能プロジェクト」(研究総括:鈴木 勉、JPMJER2002)などの支援を受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Translational Regulation by Oxidative Desulfuration of tRNA Modifications”
- DOI:10.1038/s41467-026-70126-7
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