ポイント
- 着床期の子宮内膜は低酸素状態になり、その状態が胚の着床に重要な役割を果たすことを解明
- 低酸素応答因子 Hif2α(Hypoxia-Inducible Factor 2 alpha)が、酵素 Lox(Lysyl Oxidase)を誘導し、子宮内のコラーゲン構造を再編成することを発見
- Loxが欠損すると、胚の侵入不全・胎盤形成異常が起こり、流産や胎児発育不全につながることをマウスで実証
- 不妊症や妊娠合併症(妊娠高血圧症候群など)の新たな診断・治療標的となる可能性
東京大学医学部附属病院の藍川 志津 特任研究員、東京大学 大学院医学系研究科の廣田 泰 教授らは、着床期子宮内膜から分泌されるたんぱく質であるLysyl oxidase(Lox)は胚接着部位周辺の子宮内膜間質で産生され、子宮内膜のコラーゲンの架橋を引き起こし、胚が子宮内膜へと浸潤しやすい環境を整えるとともに、その後の正常な胚生育・胎盤形成に寄与していることを、マウスモデルの研究で明らかにしました。
不妊症は世界の成人人口の約6人に1人が直面する問題です。少子化が急速に進行している日本では、新生児の8.5人に1人が体外受精・胚移植を含む生殖補助医療で出生する時代となっています。生殖補助医療の進歩にもかかわらず、良好胚を繰り返し胚移植しても妊娠しない着床不全は不妊治療の最大の課題となっています。本研究成果は、着床不全が起こる仕組みの1つを明らかにしたもので、不妊症や妊娠高血圧症候群などの病態に対する新規診断・治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年3月9日(英国時間)付で、「Cell Death & Disease」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR210H)」、日本医療研究開発機構(AMED) 成育疾患克服等総合研究事業(課題名:「子宮内膜分子解析と人工知能による着床障害の診断ストラテジーの確立」、「血小板機能異常と慢性炎症で起こる着床不全に対する新規治療法開発」、「子宮内細菌叢検査を活用した不妊症の治療ストラテジー創出」)・女性の健康の包括的支援実用化研究事業(課題名:「子宮腺筋症における薬剤抵抗性の分子機構解明に基づく治療戦略構築」)・「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業(課題名:「着床障害患者の子宮内細菌叢に対する乳酸菌サプリの有効性・安全性を検証するランダム化比較試験」)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究A(課題番号:JP25H01065)・基盤研究B(課題番号:JP23K27176、JP25K02779)・基盤研究C(課題番号:JP23K08278)・挑戦的研究(萌芽)(課題番号:JP24K22157、JP24K21911)、こども家庭科学研究費補助金(課題番号:JPMH23DB0101)、持田記念医学薬学振興財団、上原記念生命科学財団、井上科学振興財団、アステラス病態代謝研究会、内藤記念科学振興財団、東大病院・ニプロ株式会社共同研究契約の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(952KB)
<論文タイトル>
- “HIF2α-induced lysyl oxidase safeguards successful pregnancy by remodelling collagens at the feto-maternal interface”
- DOI:10.1038/s41419-026-08485-8
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