ポイント
- カゴ型構造の分子を新しい試薬として用い、化学結合の「空間配置」を制御する新技術を開発
- これまで少量しか得られなかった分子を、主生成物として選択的に合成することに成功
- 医薬品や生理活性物質の合成において、分子構造の作り分けを可能にする基盤技術として期待
大阪大学 大学院工学研究科 博士後期課程の筒井 裕哉 さん(研究当時)、工学部 応用自然科学科 4年生の志賀 心 さん、同研究科の小西 彬仁 助教、安田 誠 教授らの研究グループは、14族元素を中心に持つ特殊なカゴ構造のアリル化試薬(アリルアトラン)を新たに開発・合成し、従来とは異なる経路での反応制御が可能であることを世界で初めて明らかにしました。
これまで、α-オキシケトンと呼ばれる化合物のアリル化反応では、酸素原子と金属を挟み込む(キレーション)ことにより反応の向きが制御され、特定の空間配置(syn体)の生成が常に主として得られてきました。そのため、逆の空間配置(anti体)を選択的に得ることは極めて困難であり、長年の未解決課題となっていました。
今回、研究グループは、高い反応性を持ちながら、分子をカゴ型にすることで酸素原子との作用を弱めたアリルアトランを設計・開発し、金属配位に依存しない新しい反応制御(非キレーション制御)を実現しました。
本研究成果は、実験と理論計算の両面から解析を行い、分子の立体構造を精密に作り分ける新しい有機合成の基盤技術として、医薬品や生理活性物質の合成への応用が期待されます。
本研究成果は、2026年3月3日(日本時間)に国際科学誌「Nature Communications」(オンライン)に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「「ルイス酸ー外部刺激」系によるイオン性中間体の活性化」(JPMJCR20R3)、創発的研究支援事業「非ベンゼンπ電子系に宿る双安定な電子状態に基づく機能創発」(JPMJFR2426)、文部科学省 科学研究費助成事業の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(767KB)
<論文タイトル>
- “Non-Chelation Control in Allylations of α-Oxy Ketones Using Group-14 Allylatranes”
- DOI:10.1038/s41467-026-69732-2
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