理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年3月3日

理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

マイクロペプチドがタイマーとして細胞の運命を導く

~複雑な器官形成を支える細胞分化の制御切り替え~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 発生ゲノムシステム研究チームの近藤 武史 チームディレクター、水野 苑子 リサーチアソシエイトらの共同研究チームは、動物の発生過程において、細胞が発現するマイクロペプチドがタイマーのように機能し、特定のタイプへの細胞運命の誘導が可能な“限られた時間”を規定することを発見しました。

本研究成果は、精巧な機能と形を持ち合わせる動物の器官が、発生という時間の流れの中で、段階的に仕組みを切り替えながらどのように形作られていくのかという理解を深めるとともに、医学や生物工学など幅広い科学分野で、生命現象の時間軸に関する知見を必要とする研究開発へ貢献することが期待されます。

細胞分化は、いくつもの制御メカニズムが切り替わりながら進行します。ショウジョウバエの呼吸器である気管では、まず特定の細胞集団に気管への細胞運命が誘導され、その後の形態形成を経て、正しい場所にある細胞のみがその運命を維持し、気管細胞へと分化します。しかし、この細胞運命の制御メカニズムの切り替えを可能にする仕組みは、これまでほとんど分かっていませんでした。

共同研究チームは、気管への細胞運命の誘導開始に、11もしくは32アミノ酸長から成るマイクロペプチドが重要な役割を果たしていることを発見しました。さらにこのマイクロペプチド遺伝子の発現が一過的であり、その発現終了が、気管への細胞運命を「誘導する段階」から「維持する段階」へと切り替える合図として機能する、いわば「タイマー」の役割を果たしていることを明らかにしました。

本研究は、科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」オンライン版に2026年3月2日(現地時間)の週に掲載されます。

本研究は、理化学研究所 運営費交付金(生命機能科学研究)で実施し、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究(B)「上皮形態形成における組織形状と細胞分化の調和機構の解明(研究代表者:近藤 武史、JP20H03258)」、同 学術変革領域研究(A)「メカノ-ゲノムクロストークが制御する上皮組織の自律的秩序化(研究代表者:近藤 武史、JP22H05167)」、同 特別研究員奨励費「マイクロペプチドが上皮シート陥入を制御するメカニズムの解明(研究代表者:水野 苑子、JP22J14899)」、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「器官構築を司る多階層情報フィードバックの解明(研究代表者:近藤 武史、JPMJFR204V)」、同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)「京都大学大学院教育支援機構SPRINGプログラム(JPMJSP2110)」による助成を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Pri Micropeptide Functions as a Cell-Intrinsic Timer Controlling the Transient Phase of Cell Fate Induction”
DOI:10.1073/pnas.2511138123

<お問い合わせ>

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