名古屋大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年2月10日

名古屋大学
科学技術振興機構(JST)

発熱時の暑熱欲求行動の神経メカニズムを解明

~情動回路を介する「悪寒」の仕組み~

ポイント

名古屋大学 大学院医学系研究科 統合生理学分野の八尋 貴樹(やひろ たかき) 大学院生(研究当時、現所属:オレゴン健康科学大学)、中村 佳子(なかむら よしこ) 講師、中村 和弘(なかむら かずひろ) 教授の研究グループは、感染時に見られる暖かさを求める行動(暑熱欲求行動)の中枢神経メカニズムをラットで解明しました。

感染時、体内で産生される発熱物質プロスタグランジンE2(PGE2)は、脳の体温調節中枢である視索前野に作用して、褐色脂肪組織の熱産生や震えといった自律的な(無意識な)発熱反応を引き起こします。一方で、発熱時に伴う「悪寒」や「暑熱欲求行動」が、どのような脳内機構で生じるのかは不明でした。

研究グループは、脳の外側腕傍核に着目し、PGE2がこの領域のEP3受容体を発現する神経細胞に作用することで暑熱欲求行動を引き起こすことを発見しました。さらに、これらの神経細胞は体温調節中枢ではなく、情動中枢である扁桃体中心核へ皮膚からの寒冷感覚(冷覚)の情報を伝達することも見いだしました。PGE2はその冷覚の伝達を増強することで、悪寒の感覚を生み出し、暑熱欲求行動を駆動する可能性を示しました。

本研究成果は、情動を伴う感染症状の新たな神経基盤を提示したものであり、生体防御を担う臓器間ネットワークの制御原理やその破綻がもたらす病態の理解につながることが期待されます。また、感染時に多くの人が経験する悪寒の仕組みを理解する上で重要な知見です。

本研究成果は、2026年2月10日付 英国科学誌「The Journal of Physiology」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標2「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」(課題番号:JPMJMS2023)、日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業(CREST)「精神ストレス反応制御技術を用いたストレス性循環器疾患発症メカニズムの解明」、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(基盤研究(A、B、C))、名古屋大学 動物実験支援センター、武田科学振興財団(奨学助成)の支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“The pyrogenic mediator prostaglandin E2 elicits warmth seeking via EP3 receptor-expressing parabrachial neurons: a potential mechanism of chills”
DOI:10.1113/JP289466

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