名古屋大学,岐阜大学,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年2月7日

名古屋大学
岐阜大学
科学技術振興機構(JST)

卵巣がんの急速な腹膜播種形成のメカニズムを発見

~がん細胞は腹腔内環境を巧みに制御して播種を形成する~

ポイント

名古屋大学 大学院医学系研究科 産婦人科学の宇野 枢 客員研究者(元:大学院生/名古屋大学・ルンド大学 国際連携総合医学専攻 Joint-Degree Program、現:ルンド大学 post-doctoral fellow)、同大学 医学部附属病院 産科婦人科の吉原 雅人 病院講師、同大学 大学院医学系研究科 産婦人科学の梶山 広明 教授、腫瘍病理学の榎本 篤 教授、岐阜大学 大学院医学系研究科 腫瘍病理学の富田 弘之 准教授らの研究グループは、ルンド大学 Division of Translational Cancer Research、トヨタ記念病院との共同研究で、卵巣がん-中皮細胞スフェロイド(ACMS)という腹水中の構造形成が、卵巣がんの特徴である急速な腹膜播種形成に重要となるメカニズムを発見しました。

本研究では、なぜ卵巣がんを早期発見することが難しいのかという臨床的疑問を、最新の遺伝学的解析と顕微鏡技術、マウスモデルを用いて検討しました。これまでは、発生部位である卵管・卵巣から腹腔内に脱落した卵巣がん細胞は、単独で腹水中に存在していると考えられていましたが、本研究では、豊富な臨床腹水検体を用いて、卵巣がん細胞が単独ではなく、複数の細胞が集合するスフェロイドという特徴的な構造で生存していることを示しました。またそのスフェロイドが、実際には卵巣がん細胞単独ではなく、腹腔内の最も重要な正常細胞の1つである中皮細胞とスフェロイドを形成していることを、最新の顕微鏡技術と特殊なマウスモデルを用いて明らかにしました。

この卵巣がん-中皮細胞スフェロイド(ACMS)は、卵巣がん単独のスフェロイドと比較して、腹腔内条件で生存率が高く、通常の抗がん剤に対しても抵抗性が高く、また腹膜表面への浸潤能が非常に高いことを、連続撮影で可視化することに成功しました。この卵巣がん-中皮細胞スフェロイド(ACMS)形成を通して、卵巣がんからのTGF-β1を中心としたシグナルにより、中皮細胞に劇的な変化が生じる一方で、卵巣がん自体には大きな変化が起きていないことを明らかにしました。卵巣がんにコントロールされた中皮細胞はFascin-1などの浸潤に関与するたんぱく発現を増加させて組織に積極的に浸潤し、卵巣がんは中皮細胞が形成した経路を利用することで早期に、そして容易に腹膜播種を形成できることを明らかにしました。

この研究成果により、卵巣がん細胞と正常細胞との関わりの重要性が認識され、卵巣がんの早期播種形成のメカニズムの解明や新たな治療アプローチ再考の必要性、さらには卵巣がん再発のメカニズム解明につながることが期待されます。

本研究成果は、現地時間2026年2月6日付で国際科学総合雑誌「Science Advances」に掲載されました。

本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究(課題番号:JP20H03824、JP24K12529)、日本学術振興会 科学研究費助成事業 国際共同加速基金(課題番号:JP21KK0157、JP21KK0296)、日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究(課題番号:JP21K16788)、日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(課題番号:JP23K18326)、日本学術振興会 海外特別研究員(受付番号:202460603)、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR235L)、およびLena Wäppling's Foundationの支援のもとで行われたものです。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Mesothelial cells promote peritoneal invasion and metastasis of ascites-derived ovarian cancer cells through spheroid formation”
DOI:10.1126/sciadv.adu5944

<お問い合わせ>

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