理化学研究所,自然科学研究機構 生命創成探究センター,科学技術振興機構(JST)

2026(令和8)年1月6日

理化学研究所
自然科学研究機構 生命創成探究センター
科学技術振興機構(JST)

小胞体による細胞外基質のナノ加工作用を発見

~分子フィルターなど生物模倣技術の開発に貢献へ~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 形態形成シグナル研究チーム(研究当時)の稲垣 幸 テクニカルスタッフⅠ(研究当時)、林 茂生 チームリーダー(研究当時、現 発生ゲノムシステム研究チーム 客員主管研究員)、細胞場構造研究チーム(研究当時)の岩根 敦子 チームリーダー(研究当時)、自然科学研究機構 生命創成探究センター(ExCELLS)の村田 和義 特任教授らの共同研究グループは、細胞外基質の1つ、昆虫の体表面を覆うクチクラのナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)サイズの微細構造が、細胞内の小胞体と細胞膜の相互作用によって生み出されることを発見しました。

生物の体表面にはしばしば微細な構造が見られ、光の波長や分子をサイズで選別する機能を持っています。これをヒントに、構造色の発色加工や分子フィルターの製造など、新規の工業製品開発が進められています。本研究成果は、機能的にデザインしたクチクラの微細構造を昆虫で発現させて試作するなど、バイオミメティクス(生物模倣)分野の技術開発に貢献すると期待されます。

今回、共同研究グループは、ショウジョウバエの嗅覚器官(嗅覚毛細胞)を覆うクチクラに存在する微小な穴(ナノポア)の形成メカニズムを詳細に調べました。電子顕微鏡観察の結果、嗅覚毛細胞には小胞体ネットワークが顕著に発達していることが分かりました。さらに、小胞体に発現するGore-tex(Gox)たんぱく質が小胞体を分解し、細胞膜の過剰な拡張と細胞膜の取り込みを促進することを示しました。この作用により細胞膜は周期的に湾曲・陥入し、その外側のクチクラに対して周期的なナノポアの形成を促していました。本研究は細胞外分子の生産拠点として知られていた小胞体がクチクラのパターン形成にも関わる新規機能を明らかにしたものです。

本研究は、科学雑誌「Journal of Cell Biology」オンライン版(現地時間2025年12月29日付)に掲載されました。

本研究は、理化学研究所 運営費交付金(生命機能科学研究)で実施し、理研BDR-大塚製薬連携センター(RBOC) かけはしプログラム、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)「細胞外基質ナノ構造の生物学的構築原理の解明(研究代表者:林 茂生、JP20K20460)」「昆虫の機能的ナノ構造を規定する遺伝子ファミリー(研究代表者:林 茂生、JP24K21276)」、同 学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)「先端バイオイメージング支援プラットフォーム(研究代表者(研究当時):鍋倉 淳一、JP22H04926)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「生体内ナノ結晶構造の進化的起源の構成的理解(研究代表者:安藤 俊哉、JPMJCR24B1)」、日本医療研究開発機構(AMED) 生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)「生命分子動態機能解析システムによる創薬標的探索をめざした研究支援(研究代表者:村田 和義、23ama121005)」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Endoplasmic reticulum patterns insect cuticle nanostructure”
DOI:10.1083/jcb.202503127

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