東京大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年12月18日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

大規模言語モデルで専門家のように材料空間を探索

~自律性と解釈性を備えた無機材料設計のためのAIエージェントを開発~

ポイント

東京大学 大学院工学系研究科の高原 泉 大学院生(博士後期課程)、同大学 生産技術研究所 溝口 照康 教授、モントリオール大学 Mila - Quebec AI InstituteのBang Liu(バン・リウ) 准教授らの研究グループは、大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)の高い推論能力に着目し、目標特性を持つ無機結晶材料を、自然言語による説明を出力しながら自律的に探索・設計する生成AIフレームワーク「MatAgent」を開発しました。

新材料開発は、エネルギー産業や半導体産業などさまざまな産業分野における技術革新と持続可能な社会の実現を支える鍵であり、所望の特性を持つ材料の開発は重要な課題です。近年、生成AI技術の発展により、所望の特性を逆設計する技術が急速に発展してきましたが、既存の手法では、生成された材料がなぜ有望とされるのかを理解するのが難しいというブラックボックス性の課題や、生成された材料が必ずしも狙った特性を備えていないという精度面での課題がありました。

本研究で開発された「MatAgent」では、LLMは材料組成を提案するための推論エンジンとして機能し、さらに材料組成から3次元結晶構造を生成する生成モデルと、生成された構造から材料特性を予測する予測モデルを統合することで、LLMが提案結果に対するフィードバックを受け取り、反復的により有望な材料を提案します。本手法は、専門家の材料探索プロセスを模倣してLLMが外部のツールを戦略的に活用できる枠組みを採用しており、これによりLLMが多様な材料を提案することが可能になりました。

また、LLMがフレームワークの中心的な役割を担うことで、「有害な鉛やカドミウムを含まない材料の探索をしてください」というような自然言語による制約を与えることが可能です。さらに、探索の理由をLLMに出力させることで、従来ブラックボックスとされていた探索過程を人間が理解することが可能となり、その出力から専門家が新たな知見を獲得することも期待されます。

すなわち、今回の成果は、材料開発のためのAI技術を、材料開発における協働的なパートナーへと近づける重要な一歩であり、材料開発の加速と理解の深化に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2025年12月17日(米国東部時間)に米国科学誌「Cell Reports Physical Science」のオンライン版に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(課題番号:JPMJAX24DB)、同 国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST) 次世代AI人材育成プログラム(博士後期課程学生支援)(課題番号:JPMJBS2418)の支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Accelerated Inorganic Materials Design with Generative AI Agents”
DOI:10.1016/j.xcrp.2025.103019

<お問い合わせ>

(英文)“Large Language Models Unleash AI’s Potential for Autonomous and Explainable Materials Discovery”

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