東京大学,Nanofiber Quantum Technologies, Inc.,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年11月26日

東京大学
Nanofiber Quantum Technologies, Inc.
科学技術振興機構(JST)

量子コンピューターの規模と計算速度のジレンマを解消

~誤り耐性量子計算のコストを大幅に削減する新提案~

ポイント

東京大学 大学院工学系研究科の田宮 志郎 客員研究員と小芦 雅斗 教授、および同大学 大学院情報理工学系研究科の山崎 隼汰 准教授は、誤り耐性型量子コンピューターの性能を左右する規模と計算速度のジレンマを解消する新しい理論を確立しました。

量子コンピューターの計算に用いる量子ビットは、ノイズの影響を受けやすいことが知られています。そのため量子エラー訂正符号という技術でエラーから量子ビットを守りながら計算を進めることが不可欠です。しかし、従来の方式では、使用する符号の種類によって規模か計算速度のどちらかを犠牲にする必要があり、両立が困難でした。そこで本研究では、情報の保持効率に優れた量子低密度パリティ検査符号と、演算の実行に適した連接符号を組み合わせたハイブリッド方式を提案しました。また、この方式の解析のために「部分回路縮約」という手法を新たに開発しました。この手法を用いることで、本方式が、使用する量子ビット数の増大を大幅に抑えつつ、計算速度の低下も従来手法と同レベルに抑えられることを厳密に証明しました。この成果は、実用的な量子コンピューター実現のハードルを下げる道筋を示すもので、世界的な開発競争が続く量子コンピューターの新たな設計指針となることが期待されます。

本研究成果は2025年11月26日(現地時間)付で「Nature Physics」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」(プログラムディレクター(PD):北川 勝浩 大阪大学 量子情報・量子生命研究センター センター長) 研究開発プロジェクト「誤り耐性型量子コンピュータにおける理論・ソフトウェアの研究開発」(プロジェクトマネージャー(PM):小芦 雅斗 東京大学 大学院工学系研究科 教授(課題番号:JPMJMS2061)、および同 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「革新的な量子情報処理技術基盤の創出」研究領域(研究総括:富田 章久)における研究課題「高速な量子機械学習の基盤構築」(課題番号:JPMJPR201A)および「量子・古典の異分野融合による共創型フロンティアの開拓」研究領域(研究総括:井元 信之)における研究課題「高速な定数空間オーバーヘッド誤り耐性量子計算の理論基盤」(課題番号:JPMJPR23FC)、および日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(KAKENHI)(課題番号:JP23KJ0521、JP23K19970)の支援を受けて実施しました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Fault-tolerant quantum computation with polylogarithmic time and constant space overheads”
DOI:10.1038/s41567-025-03102-5

<お問い合わせ>

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