理化学研究所,東京大学,立命館大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年11月20日

理化学研究所
東京大学
立命館大学
科学技術振興機構(JST)

遺伝子スケールのクロマチンを設計し再構成する

~3次元DNA構造の構築原理に迫る、ゲノム物理の新基盤~

理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 生体非平衡物理学 理研白眉研究チーム(研究当時)の深井 洋佑 研究員(研究当時、現 開拓研究所 川口生体非平衡物理学研究室 研究員)、川口 喬吾 理研白眉研究チームリーダー(研究当時、現 開拓研究所 川口生体非平衡物理学研究室 主任研究員、東京大学 大学院理学系研究科附属知の物理学研究センター 准教授)、エピジェネティクス制御研究チーム(研究当時)の若森 昌聡 技師(研究当時)、梅原 崇史 チームリーダー(研究当時、現 立命館大学 薬学部教授)、東京大学 定量生命科学研究所 先端定量生命科学研究部門 クロマチン構造機能研究分野の鯨井 智也 講師、胡桃坂 仁志 教授らの共同研究グループは、真核生物の持つゲノム構造「クロマチン」を、設計したヒストン修飾パターンの下、試験管内で再構成する技術を開発し、約2万塩基対のDNAに対応する遺伝子スケール(一遺伝子座スケール)の長さを持つ再構成クロマチンの構造・動態の解析に成功しました。

本研究成果は、細胞の運命をつかさどる3次元ゲノム構造の構築原理を解明するための定量的な研究基盤を提供します。将来的には、ヒストンの修飾パターンからクロマチン構造や遺伝子発現・細胞機能を予測・制御する技術の開発につながると期待されます。

真核生物のゲノムは、ヒストンタンパク質の八量体にDNAが巻き付いたヌクレオソームを基本単位とし、これが数珠状につながったクロマチンとして核に収められています。クロマチンの3次元構造はヒストンのアセチル化などの翻訳後修飾と相関して変化し、遺伝子発現や細胞の分化に関わります。

共同研究グループは、一遺伝子座スケールの長さを持つクロマチン(長鎖クロマチン)を、制御された修飾パターンの下で合成する手法を開発しました。この実験系により、ヒストンがアセチル化された領域のパターンに応じてヌクレオソームの接触頻度のパターンとクロマチン構造のゆらぎダイナミクスが大きく変化することを、一分子観察などの方法を用いて初めて直接実証しました。

本研究成果は科学雑誌「Science Advances」オンライン版(11月19日付:日本時間11月20日)に掲載されました。

本研究は、理化学研究所 運営費交付金(理研白眉、生命機能科学研究)で実施し、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)「情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理(領域代表者:岡田 康志、研究代表者:岡田 康志、JP19H05795)」「遺伝子制御の基盤となるクロマチンポテンシャル(領域代表者:木村 宏、研究代表者:川口 喬吾、JP19H05275)」、同 学術変革領域研究(A)「個体の細胞運命決定を担うクロマチンのエピコードの解読(領域代表者:立花 誠、研究代表者:胡桃坂 仁志、JP24H02328)」「DNAの物性から理解するゲノムモダリティ(領域代表者:西山 朋子、研究代表者:梅原 崇史、JP21H05764)」「進化情報アセンブリによる生命機能の創出原理(領域代表者:小林 徹也、研究代表者:川口 喬吾、JP25H01361)」、同 基盤研究(S)「クロマチンにおけるDNA修復機構の構造基盤の解明(研究代表者:胡桃坂 仁志、JP23H05475)」、同 基盤研究(A)「細胞内構造を支えるヘテロポリマー間相互作用の網羅的解析(研究代表者:川口 喬吾、JP23H00095)」、同 基盤研究(B)「がん細胞で頑強に維持される超アセチル化エピゲノムを操作する(研究代表者:梅原 崇史、JP20H03388)」「リシンアセチル化による後成遺伝情報の発現と継承の仕組みを理解する(研究代表者:梅原 崇史、JP24K02184)」「自己駆動する集団におけるカイラル輸送現象の研究(研究代表者:早田 智也、JP21H01007)」、同 若手研究「長鎖クロマチンの再構成・一分子観察で探る修飾パターン依存的な構造と機能(研究代表者:深井 洋佑、JP22K14016)」「クロマチン構造における自然免疫制御機構の解明(研究代表者:鯨井 智也、JP22K15033)」、同 挑戦的研究(開拓)「細胞内のクロマチンにおける多様な転写機構の構造基盤(研究代表者:鯨井 智也、JP23K17392)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X「長鎖クロマチンの3D構造観察に基づく物理モデル推定(研究代表者:深井 洋佑、JPMJAX24LF)」、同 戦略的創造研究推進事業 ERATO「胡桃坂クロマチンアトラスプロジェクト(研究総括:胡桃坂 仁志、JPMJER1901)」、同 戦略的創造研究推進事業 CREST「核内環境による生命力維持機構の解明(研究代表者:胡桃坂 仁志、JPMJCR24T3)」、AMED 創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS、JP25ama121009)、理研新領域開拓課題「TADからゲノム構築原理を読み解く(領域代表者:古関 明彦)」、理研基礎科学特別研究員制度による助成を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Gene-scale in vitro reconstitution reveals histone acetylation directly controls chromatin architecture”
DOI:10.1126/sciadv.adx9282

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