NIMS(物質・材料研究機構),科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年11月20日

NIMS(物質・材料研究機構)
科学技術振興機構(JST)

組成傾斜薄膜に対応したAIベース自律材料探索システムを開発

~最高性能を示す新しい磁気機能材料薄膜の高効率な開拓に成功~

NIMSは、1つの試料から膨大な材料データを獲得できる”組成傾斜薄膜”に対し、データ解析やAIによる最適組成予測を実行するプログラムを開発しました。これを用いた磁性組成傾斜薄膜の自律材料探索により、次世代磁気センサーなどの応用で有望な巨大な異常ホール効果を示す新しい磁性材料を発見しました。

AIと自動実験を組み合わせた自律材料探索は、革新的な新材料を効率的に発見できる手法として注目されています。しかし、デバイス応用で重要な薄膜材料では、多数の組成を同時に探索できる「コンビナトリアル成膜手法」を自律材料探索に適用するための最適化プログラムがこれまで存在しませんでした。特に、組成が連続的に変化する「組成傾斜薄膜」から得られる大量のデータを自動解析し、次の実験条件を自律的に決定する仕組みの整備が課題でした。

研究チームは、組成傾斜薄膜に適したAI最適化手法(ベイズ最適化:データから次に試す条件を賢く選ぶ方法)を開発し、NIMS主導の自動自律実験用オープンソースソフトウェア「NIMO」に実装しました。これにより、実験と解析-予測を自動で繰り返すクローズドループを構築し、多数の試料を一度に評価しながら効率的に材料探索を進めることが可能になりました。実証として、Fe–Co–Ni–(Ta、W、Ir)(鉄-コバルト-ニッケル-(タンタル、タングステン、イリジウム))系の5元系薄膜を対象に異常ホール効果の最大化を目指した探索を行い、室温成膜の磁性薄膜として報告例の中で最大級に匹敵する異常ホール抵抗率(10.9マイクロオームセンチメートル)を実現する新規アモルファス薄膜Fe₄₄.₉Co₂₇.₉Ni₁₂.₁Ta₃.₃Ir₁₁.₇を見いだしました。

本研究は、NIMS 磁気機能デバイスグループの遠山 諒 ポスドク研究員(研究当時)、桜庭 裕弥 グループリーダー、データ駆動型アルゴリズムチームの田村 亮 チームリーダーらによる研究チームによって実施されました。

本研究成果は、2025年11⽉19⽇(現地時間)に「npj Computational Materials」誌に掲載されました。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「未踏探索空間における革新的物質の開発」(JPMJCR21O1)、さきがけ「AI・ロボットによる研究開発プロセス革新のための基盤構築と実践活用」(JPMJPR24T8)およびERATO「内田磁性熱動体プロジェクト」(JPMJER2201)、文部科学省 データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト「データ創出・活用型磁性材料研究拠点(DX-MAG)」(JPMXP1122715503)、「再生可能エネルギー最大導入に向けた電気化学材料研究拠点(DX-GEM)」(JPMXP1121467561)の支援を受けています。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Autonomous closed-loop exploration of composition-spread films for the anomalous Hall effect”
DOI:10.1038/s41524-025-01828-7

<お問い合わせ>

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