大阪大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年11月12日

大阪大学
科学技術振興機構(JST)

左右の手のように異なる“キラル”分子構造が、太陽電池の性能を高める鍵に

~CISS効果によるスピン選択的電荷輸送を活用した新たな戦略を提案~

ポイント

大阪大学 大学院工学研究科の大学院生のLi Shuang(リ・シュアン)さん(博士後期課程)、石割 文崇 招へい准教授(現 東京都立大学 准教授)、佐伯 昭紀 教授らの研究グループは、キラル物質に特有の電子のスピンを選択的に通す「CISS効果(Chirality-Induced Spin Selectivity)」を活用することで、有機太陽電池の発電効率を高める新しい分子設計指針を提案しました。

有機太陽電池は、軽量・柔軟で印刷プロセスにも適した次世代エネルギーデバイスとして注目されていますが、そのさらなる高効率化と新しい設計指針の確立が求められています。研究グループは、分子構造に面外方向の非対称性とキラリティーを導入した新しい非フラーレンアクセプター(NFA)分子「キラル二面性NFA」を開発しました。そして、このキラル二面性NFAを用いた太陽電池デバイスを作製し、光電変換過程においてバルクヘテロジャンクション(BHJ)内での電荷再結合が抑制され、性能が向上することを実証しました。

さらに、キラルではないドナー性ポリマーと混合したバルクヘテロジャンクションの状態でもCISS効果が発現し、ホモキラルな二面性NFAを用いた際にも高い光電変換効率が得られました。

本成果は、有機半導体におけるスピン選択的電荷輸送を実際のデバイス性能に結びつけた初の例であり、「キラリティーに基づく有機太陽電池性能向上の新戦略」を示すとともに、今後の「スピン太陽電池」などのスピントロニクスデバイスの開発への展開も期待されます。

本成果は、ドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」に、2025年11月11日付(日本時間)で公開されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR23O2)、同 さきがけ(JPMJPR21A2)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 基盤研究(A)(JP24H00484)、学術変革領域研究(A)(超セラミックス、JP23H04626)、学術変革領域研究(B)(ラダーポリマー、JP25H01406、JP25H01409)の支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Chiral Bifacial Non-Fullerene Acceptors with Chirality-Induced Spin Selectivity: A Homochiral Strategy to Improve Organic Solar Cell Performance”
DOI:10.1002/anie.202518505

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