ポイント
- 低毒性で安価な酸化亜鉛(ZnO)半導体ナノ結晶を光触媒として用い、室温・大気圧下で近紫外LED光を当てるだけで、分解が特に難しいペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)をリサイクル可能なフッ化物イオンにまで分解することに成功
- ナノ結晶表面を修飾する有機分子が分解反応の効率を大きく左右することを明らかにし、10時間の光照射でPFOSの残存率をわずか0.5パーセントにまで低減
- ナノ結晶は沈殿物として容易に分離でき、ナノ結晶1つあたりで切断できる炭素–フッ素結合(C–F結合)の数を示す触媒回転数は8,250に達し、高い触媒サイクル性能を実証
立命館大学 生命科学部の小林 洋一 教授と同大学 大学院生命科学研究科 博士前期課程学生の金尾 周平 らの研究チームは、環境汚染や健康リスクの観点から国際的に問題視されている「永遠の化学物質」PFAS(ペルフルオロアルキル化合物)のうち、国際的な規制対象となっているペルフルオロオクタン酸(PFOA)、およびその中でも特に分解が困難とされてきたペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の分解・無害化に成功しました。研究では、毒性が低く、安価で大量合成が可能な酸化亜鉛(ZnO)半導体ナノ結晶と、市販の近紫外LED光を組み合わせ、常温・常圧という穏やかな条件下でPFASをフッ化物イオンにまで分解できることを実証しました。生成したフッ化物イオンは、原料鉱石であるホタル石(フッ化カルシウム)として再利用可能であり、環境浄化と資源循環の両立を実現する新たな光触媒技術として注目されています。
本研究成果は、2025年11月5日(日本時間)に王立化学会誌「Chemical Science」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(PRESTO)(JPMJPR22N6)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(JP21K05012、JP24K01460)、学術変革領域研究(A)(超セラミックス、25H01687)の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(471KB)
<論文タイトル>
- “Photocatalytic defluorination of perfluoroalkyl substances by surface-engineered ZnO nanocrystals”
- DOI:10.1039/D5SC05781G
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