京都大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年10月28日

京都大学
科学技術振興機構(JST)

腸内環境モニタリング機能付きデジタル錠剤に向けた
胃酸充電半導体集積回路の開発に成功

~65ナノメートル CMOSで実証、消化器官内の温度・pHモニタリングに目途~

京都大学 大学院情報学研究科 新津 葵一 教授、Wu You(ウ・ヨウ) 同 修士課程学生、大塚製薬株式会社 ポートフォリオマネージメント室 大西 弘二 プリンシパル、同 デジタル事業室 山根 育郎 課長らの研究グループは、腸内環境モニタリング機能付きデジタル錠剤に向けた胃酸充電機能を有する半導体集積回路の開発に成功し、65ナノメートル(ナノメートル:10億分の1メートル)のCMOSプロセスで製造した半導体集積回路を用いて実証しました。

生体内センシングは、健康状態を把握するうえで有効なアプローチの1つです。特に、腸内環境の継続的なモニタリングは、近年の研究によりその有用性が明らかになり、注目を集めています。しかし、腸内環境の継続的なモニタリングを日常的に行うことは困難を伴います。そこで研究グループは、腸内環境モニタリング機能付きデジタル錠剤の開発に取り組みました。今回開発したデジタル錠剤は、胃酸発電用電極を搭載した1ミリメートル角程度の微小な半導体集積回路と薬剤で構成されています。米国において、服薬状況を客観的に把握できる服薬管理機能付きデジタル錠剤はすでに実用化されていますが、胃酸発電で得られた電力は充電に活用できず胃内のみで用いられていました。デジタル錠剤を腸内環境モニタリング、例えば温度・酸度(pH)モニタリングへと活用させるためには、電力の確保が必要になります。そこで本研究開発では、胃酸発電で得られた電力を半導体集積回路内のコンデンサーに充電・蓄電し、その電力を効率的に腸内環境モニタリングへと適用する基盤技術の開発に成功しました。また、65ナノメートルの低電力CMOSプロセスにおいて提案回路の有効性を実証しました。

本研究成果は、2025年10月28日(現地時間)から開催されている「IEEE Nordic Circuits and Systems Conference」において発表されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業(ムーンショット目標1、JPMJMS2214)研究開発プロジェクト「生体内サイバネティック・アバターによる時空間体内環境情報の構造化」(プロジェクトマネージャー(PM):新井 史人、東京大学 大学院工学系研究科 教授)の支援を受け、実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“A 1.4-V 260-pW 1-mm2 65-nm CMOS Temperature/pH Sensing IC Featuring Voltage-Stacking Timer and Wireless Transmitter for Stomach-Acid-Charged Tablet-Type Digital Pills with Long-Term In-Body Monitoring”

<お問い合わせ先>

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