ポイント
- ゼオライトの結晶構造から約1兆個のゼオライト/ゼオライト界面モデルを構築することで、インターグロースを形成するゼオライトペアを絞り込みました。
- 「2つのゼオライトの安定性の差」および「インターグロースの界面エネルギー」が、合成可能なゼオライトインターグロースを予測する優れた指標であることを発見しました。
- 理論計算による予測で絞り込んだ新規ゼオライトインターグロース候補のうち「RSN/VSV」の合成に成功し、本研究の計算手法の有効性を実証しました。
東京大学 大学院工学系研究科 化学システム工学専攻の大石 宏太 大学院生、村岡 恒輝 助教、中山 哲 教授らのグループは、同専攻の大久保 達也 教授、同研究科 附属総合研究機構の柴田 直哉 機構長・教授らのグループ、同研究機構の脇原 徹 教授、同大学 大学院新領域創成科学研究科の伊與木 健太 准教授らのグループと共同で、膨大な数の候補から有望なゼオライトインターグロースを絞り込む、大規模計算ワークフローを開発しました。
ゼオライトインターグロースは、触媒や分離膜として優れた性能を持つことがありますが、インターグロースを形成しうるゼオライトの探索は実験による試行錯誤に頼っていました。本研究では、スーパーコンピューターを用いて全てのゼオライト/ゼオライト界面構造モデルを列挙しました。作成した構造モデルをエネルギー的に解析することにより、「2つのゼオライトの安定性の間のエネルギー差」および「インターグロースの界面エネルギー」が、合成可能なゼオライトインターグロースを予測する優れた指標であることを発見し、これを用いてインターグロースとして有望なゼオライトペアを絞り込むことに成功しました。さらに、この結果に基づいて新規インターグロース「RSN/VSV」を実験的に合成し、本手法の有効性を実証しました。
本研究成果は、工業的に有望な特性を持つゼオライトインターグロースの探索を加速するだけでなく、異なる構造の結晶同士が接する固相-固相界面の理解にも広く貢献するものと期待されます。
本研究成果は、2025年10月20日付(英国夏時間)で、「Nature Materials」に掲載されました。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR2378、JPMJPR21AA、JPMJPR24J7)、同 戦略的創造研究推進事業 ERATO(課題番号:JPMJER2202)、同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2108)、JSPS 科研費(課題番号:22K14751)、ERCA(課題番号:JPMEERF20242M01)、および東北大学 金属材料研究所計算科学センター(CCMS)スーパーコンピュータ(プロポーザル番号:202312-SCKXX-0006)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(665KB)
<論文タイトル>
- “Drawing Boundaries between Feasible and Unfeasible Zeolite Intergrowths using High-Throughput Computational Screening with Synthesis Validation”
- DOI:10.1038/s41563-025-02377-6
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