NIMSは、東京理科大学、神戸大学との共同研究により、イオンの振る舞いを利用して情報処理を行う新しいAI(人工知能)デバイスを開発しました。従来の深層学習(ディープラーニング)に比べ、計算負荷を約100分の1に減らすことに成功しています。端末機器(エッジデバイス)に直接搭載した「エッジAI」の情報処理性能への貢献が期待されます。
近年、深層学習や生成AIに代表される機械学習の消費電力が指数関数的に増大しており、深刻な社会問題となっています。この解決に向けて低消費電力かつ高い計算性能を備えたAIデバイスの需要が高まっています。高効率な脳型情報処理であるリザバーコンピューティングを行うAIデバイス「物理リザバー」は、計算負荷(必要な積和演算の数)が小さく省電力であるため注目されていますが、ソフトウエア処理に比べて低い計算性能が課題でした。
今回、研究チームは、イオンを利用する物理リザバー素子を開発し、深層学習並みの高い計算性能と桁違いに低い計算負荷を実現しました。高い電子移動度や両極性を持つグラフェンと、イオンゲルを組み合わせることで、速度が異なるさまざまな反応(イオンと電子がさまざまな形で動く)が複雑に関係しながら進むため、非常に広い範囲で時定数が異なる(変化速度が異なる)入力信号に対応が可能となります。その計算性能は、従来型物理リザバーの中でも最も高い計算性能を示し、ソフトウエアで実行した深層学習と同等の計算性能でありながら、計算負荷を約100分の1まで低減することに成功しました。
今後は、本研究で得られた素子を搭載して、高性能・高効率に情報処理する超低消費電力エッジAIデバイスの実現を目指していきます。
本研究成果は、2025年10月14日(現地時間)に、「ACS Nano」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、JST さきがけ「新原理デバイス創成のためのナノマテリアル(研究総括:岩佐 義宏)」における研究課題「超高速動作イオントロニクスの創成」(JPMJPR23H4)の一環として行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.58MB)
<論文タイトル>
- “Two Orders of Magnitude Reduction in Computational Load Achieved by Ultrawideband Responses of an Ion-Gating Reservoir”
- DOI:10.1021/acsnano.5c06174
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