ポイント
- 真社会性哺乳類であるハダカデバネズミにおいて、個体タグ技術を用いて群れ内全個体を30日間追跡し、群れ全体の行動型と社会関係を網羅的に明らかにしました。
- 繁殖個体(女王・繁殖オス)が特異な行動型を持ち社会の中心を担う一方、非繁殖個体(ワーカー)が多様な行動型に分かれ安定的に役割分担していることを示しました。
- 本成果はハダカデバネズミにとどまらず、多様な動物種の社会構造研究に広く応用可能であり、社会性研究の基盤を築くものです。
熊本大学 大学院生命科学研究部の山川 真徳 博士研究員、東京大学 定量生命科学研究所の奥山 輝大 教授、九州大学 大学院医学研究院の三浦 恭子 教授(兼:熊本大学 大学院生命科学研究部 客員教授)、総合研究大学院大学の沓掛 展之 教授らによる研究グループは、哺乳類では極めて珍しい真社会性を持つハダカデバネズミにおいて、大規模社会行動解析によって社会全体の構造と個体間の社会的関係性を明らかにしました。
本研究では、個体タグであるRFID技術を用いた群れ全体の自動追跡システムを独自開発し、5群102匹を対象に30日間の動きを網羅的に記録しました。その結果、繁殖個体(女王と繁殖オス)は特有の行動を示し、社会の中心的存在であることが判明しました。一方、非繁殖個体(ワーカー)は「働き者」など6種類の行動型に分かれ、安定した役割分担をしていることが分かりました。さらに行動型ごとに他個体との関係性も異なり、群れの中で多様な戦略が共存していることが示されました。
この成果は、他の動物種での社会性研究にも応用可能であり、協力社会の仕組みやその維持メカニズムを解明するための重要な基盤となります。
本研究成果は、日本時間2025年10月9日付で、「Science Advances」誌に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR2143・JPMJFR216C)、次世代研究者挑戦的研究プログラム(課題番号:JPMJSP2104)、共創の場形成支援プログラム(課題番号:JPMJPF2010)、戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR23B1)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(課題番号:JP21H05140・JP21H05143・JP22H02698・JP23K20043・JP24H00542・JP24K02136・JP25H01000・JP25K21744)、日本医療研究開発機構(AMED) 再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラム(課題番号: JP24bm1123057)の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Quantitative and systematic behavioral profiling reveals social complexity in eusocial naked mole-rats”
- DOI:10.1126/sciadv.ady0481
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