科学技術振興機構(JST),大阪大学,ZEN大学,東京大学

2025(令和7)年10月2日

科学技術振興機構(JST)
大阪大学
ZEN大学
東京大学

ゴムの鋭い亀裂は粘弾性から生じる

~ノーベル賞受賞者30年来の理論を証明~

ポイント

JST 戦略的創造研究推進事業において、大阪大学 大学院基礎工学研究科の長滝谷 北斗 大学院生(博士後期課程)、小林 舜典 助教、垂水 竜一 教授とZEN大学 知能情報社会学部 作道 直幸 准教授(兼:東京大学 大学院工学系研究科 特任准教授)の研究グループは、ゴムの高速破壊の際に亀裂先端が鋭くとがるメカニズムを、世界で初めて数学的に解明しました。

ゴム風船が割れたり、タイヤが破裂(バースト)したりするのは、微小な亀裂が一瞬で広がる「高速破壊」によるものです。このとき、亀裂先端が鋭化し破壊が加速しますが、なぜ鋭化するのかは長年解明されておらず、従来は材料の複雑な非線形効果が原因と考えられてきました。

本研究グループは、亀裂進展の問題を数学的に厳密に解き、亀裂の形状と材料全体の変形を記述する数式を導出しました。これにより、亀裂先端の鋭化が、ゴムなどのポリマー材料(高分子材料)が持つ基本的な性質である「粘弾性」だけで生じることを証明しました。さらに、ノーベル物理学賞受賞者ド・ジェンヌ 博士が約30年前に提唱した「粘弾性トランペット理論」を、連続体力学の基礎方程式から数学的に証明しました。

本成果は、タイヤから医療材料まで幅広い粘弾性材料の破壊制御の理論的基盤となり、製品の耐久性向上や事故防止、長寿命化による環境負荷低減への貢献が期待されます。

本成果は、2025年10月1日(現地時間)に米国の学術誌「Physical Review Research」にLetterとしてオンラインで公開されました。

本成果は、以下の支援によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)

「酒井複素ゲルプロジェクト」(課題番号:JPMJER2401)
研究総括:酒井 崇匡(東京大学 大学院工学系研究科 教授)
2024年10月~2030年3月

上記研究領域では、ゲルの構造や性質とその法則を解き明かすことで、ゲルを設計可能な素材へと進化させ、新たな価値創造へつなげることを目的としています。

戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)

「材料多様体のマルチスケールメカニクス」(課題番号:JPMJPR1997)
垂水 竜一(大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授)

創発的研究支援事業(FOREST)

「高分子ゲルの普遍的熱力学・動力学・破壊力学の構築」(課題番号:JPMJFR232A)
作道 直幸(ZEN大学 知能情報社会学部 准教授、東京大学 大学院工学系研究科 特任准教授)

そのほか、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 基盤研究(B)「ゲル弾性論の構築:負のエネルギー弾性とネットワークトポロジーの寄与の解明(研究代表者:作道 直幸、課題番号:JP23K22458・JP22H01187)」、「精密ゲル科学に基づくゲル弾性論と浸透圧原理の解明(研究代表者:作道 直幸、課題番号:JP25K00966)」による支援を受けて行われました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Analytical expression for fracture profile in viscoelastic crack propagation”
DOI:10.1103/4gnw-ys42

<お問い合わせ先>

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