東京大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年9月19日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

浮揚ナノ粒子で量子スクイージングを実現

~微粒子の運動の揺らぎを低減し、量子力学的状態を生成~

ポイント

東京大学 大学院理学系研究科の相川 清隆 准教授らによる研究グループは、真空中に浮かせたナノ粒子の運動状態の量子スクイージングを実現しました。

本研究では、レーザーによって作られたポテンシャルの最低エネルギー準位である量子基底状態付近まで冷却された直径300ナノメートル程度のナノ粒子の運動状態を、レーザーの出力光強度を制御することによって操作し、揺らぎ(分散)の小さな状態を生成しました。ナノ粒子の速度分布を飛行時間法により測定した結果、生成した状態の速度の揺らぎを量子基底状態の揺らぎより小さくできることを、世界で初めて観測しました。先行研究では、ナノ粒子の運動を量子基底状態付近まで冷却できていたものの、古典力学では説明できない量子力学的な運動状態の生成は実証されていませんでした。

今回量子スクイージングを実現するために採用した手法は、原子などの微視的な粒子において有効であることが知られており、ナノ粒子に対しても有用であるとの理論的な提案はなされていました。しかし、ナノ粒子が振動などのさまざまなノイズに対して敏感であるために、その実験的な実証は困難でした。この成果は、今後、ナノ粒子による高感度な次世代量子センシングの実現や、ナノ粒子を用いて巨視的スケールにおける量子力学的振る舞いを探る研究に役立つことが期待されます。

本研究成果は、2025年9月18日(米国東部夏時間)付で、「Science」に掲載されました。

研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO(課題番号:JPMJER2302)、同 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)(課題番号:JPMJPF2015)、同 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR23I1)、同 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR1661)、東工大 挑戦的研究賞、「東工大の星」研究支援、東工大・研究の種、東工大・末松賞、大隅良典基礎研究支援、三菱財団 自然科学研究助成、光科学技術研究振興財団 研究助成、村田学術振興財団 研究助成、科研費「若手研究A(課題番号:JP16K13857)」、「基盤研究B(課題番号:JP19H01822)」、「挑戦的萌芽研究(課題番号:JP16H06016)」、「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:JP22K18688)」、日本学術振興会特別研究員(課題番号:JP24KJ1058)、JST 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業(課題番号:JPMJFS2112)、同 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2108)の支援により実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Quantum squeezing of a levitated nanomechanical oscillator”
DOI:10.1126/science.ady4652

<お問い合わせ先>

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