ポイント
- 2,526名のワクチン接種者から成る福島ワクチンコホートの縦断データを解析し、COVID-19 mRNAワクチンの追加接種後の血中IgG(S)抗体価動態に、「耐久型」「脆弱型」「急速低下型」という3つの特徴的な集団が存在することを明らかにした。
- 「脆弱型」「急速低下型」の集団に分類される人は早期にブレークスルー感染を経験していた。
- ブレークスルー感染を経験した人は、経験しなかった人に比べて、(感染前の)追加接種後100日以内の血中IgA(S)抗体価が有意に低かった。
名古屋大学 大学院理学研究科の岩見 真吾 教授の研究グループは、福島県立医科大学の坪倉 正治 教授らとの共同研究により、COVID-19 mRNAワクチンの初回2回接種から1回目の追加接種後における血中IgG(S)抗体価の変動を解析し、「耐久型」「脆弱型」「急速低下型」という3つの特徴的な抗体応答パターンが存在することを明らかにしました。さらに、脆弱型と急速低下型の人では、他の型に比べて早期にブレークスルー感染を経験していることも判明しました。また、ブレークスルー感染を経験した人では、追加接種後100日以内における血中IgA(S)抗体価が、感染せずに済んだ人に比べて有意に低いことが示されました。
現在流行中の新型コロナウイルス変異株や、将来出現し得る新たな変異株への備えと、社会生活の維持を両立させるためには、新型コロナワクチンの継続的な接種が不可欠です。限られた医療資源を有効に活用し、より効果的なワクチン接種体制を構築するためには、戦略の最適化が重要となります。
本研究成果により、ブレークスルー感染のリスクが高い集団を特定し、継続的な接種の優先対象とすべき人を明らかにしました。また、低いIgA(S)抗体価がブレークスルー感染リスクの高い人を予測するバイオマーカーとして使用できる可能性も示しました。今後、こうした高リスク集団を早期に特定できるようになれば、より適切なタイミングでの継続的な接種が可能となり、感染リスクの低減につながると期待されます。
なお、本研究で用いた解析手法は、さまざまな種類のワクチン接種に応用が可能であり、柔軟性の高さから、将来のパンデミックやポストコロナ時代における個人および集団レベルの免疫強化政策の立案に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2025年9月18日(日本時間)付で国際学術雑誌「Science Translational Medicine」に掲載されました。
本研究は、JST ムーンショット型研究開発事業 ムーンショット目標2「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」(JPMJMS2021、JPMJMS2025)の支援の下で行われたものです。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Longitudinal antibody titers measured after COVID-19 mRNA vaccination can identify individuals at risk for subsequent infection”
- DOI:10.1126/scitranslmed.adv4214
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