ポイント
- アルツハイマー病などの神経疾患を治療するアンチセンス核酸医薬(ASO)において、有効性を維持しながら安全性を大幅に高める新技術を開発。
- 新規人工核酸「5′-cyclopropylene(5′-シクロプロピレン、5′-CP)」をASOの適切な部位に組み込むことで、マウス・ヒト神経細胞およびマウス・ラットを用いた実験において、創薬上の課題である遅発性神経毒性が改善するメカニズムを発見。
- 本技術により、ASOの投与量制限を緩和できる可能性があり、アルツハイマー病をはじめとする幅広い中枢神経疾患に対する治療薬開発の加速が期待される。
アンチセンス核酸医薬(ASO)は、主にRNAの働きを制御する薬であり、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む多くの神経疾患に対する新たな治療薬候補として注目されています。しかし、髄腔内投与後に遅発性で重大な神経系副作用(中枢神経毒性)が現れることが課題となっています。
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野および核酸・ペプチド創薬治療研究センターの横田 隆徳 特任教授、吉岡 耕太郎 特任講師、Su Su Lei Mon(ス・ス・レイ・モン) 特任研究員、黒田 隆之 大学院生らの研究グループは、大阪大学 大学院薬学研究科 生物有機化学分野の小比賀 聡 教授、山口 卓男 講師らのグループと共同研究で、新しい人工核酸「5′-cyclopropylene(5′-CP)」をASOに組み込むことで、有効性を保ちながら神経系副作用を大きく軽減できることを、神経細胞およびマウス・ラットを用いた実験で明らかにしました。
さらに、副作用軽減のメカニズムを検討し、神経細胞内におけるパラスペックルタンパクの異常な局在が関与していることを突き止めました。
本技術によりASOの安全性が向上し、将来的により多くの神経疾患に対するASOの開発につながることが期待されます。
この研究成果は、国際科学誌「Molecular Therapy - Nucleic Acids」において、2025年9月12日(現地時間)にオンライン版で発表されました。
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業(JP20am0401006、JP19am0401003)、同 脳とこころの研究推進プログラム(領域横断的かつ萌芽的脳研究プロジェクト、JP21wm0525032)、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(JPMJFR216H)、日本学術振興会(JSPS) 科研費助成事業(基盤研究(B)JP22H02979、挑戦的研究(開拓)JP20K21882)の支援の下で行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.52MB)
<論文タイトル>
- “Unraveling and controlling late-onset neurotoxicity of CNS-targeted antisense oligonucleotides through strategic chemical modifications”
- DOI:10.1016/j.omtn.2025.102692
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