東京大学,科学技術振興機構(JST)

2025(令和7)年9月8日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

細胞分裂を支える「2つの連動する複製」

~遺伝情報を正確に伝えるための空間横断的な制御機構の解明~

ポイント

東京大学 大学院薬学系研究科の松橋 恭平 大学院生(研究当時)、畠 星治 特任講師、北川 大樹 教授らの研究グループは、複製されたDNAの正確な分配を保証するために、中心体複製のタイミングがDNA複製に連動して制御されていることを明らかにしました。

中心体は、細胞分裂時に紡錘体の極を形成する細胞小器官です。複製されたゲノムDNAを2つの娘細胞に正確に分配するためには、中心体が1細胞周期に1回、適切なタイミングで複製される必要があります。本研究では、DNA複製因子DONSONが、DNA複製と中心体複製という2つの複製過程を連動させることで、複製されたDNAが娘細胞へ正確に分配されるのを保証していることを明らかにしました。さらに、この仕組みの破綻が、小頭症というDONSONの遺伝子変異を原因とする神経系疾患の原因となる可能性を提示しました。本成果は、正確な細胞分裂を保証する新たな分子機構の解明につながるとともに、遺伝性小頭症を含む疾患の将来的な診断や治療戦略の構築に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2025年9月8日(英国夏時間)付で国際科学誌「Nature Communications」に公開されました。

本研究は、JSPS 科研費(課題番号:18K06246、19H05651、20K15987、20K22701、21H02623、22H02629、22K20624、23K14176、23H02627、24K02174、24H02284)、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR22E1)、同 戦略的創造研究創推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR21EC)、武田科学振興財団、上原記念生命科学財団、薬学研究奨励財団、小柳財団、かなえ医薬振興財団、加藤記念バイオサイエンス振興財団、内藤記念科学振興財団、中島記念国際交流財団、住友財団、稲盛財団、アステラス病態代謝研究会などからの支援を受けて実施されました。

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“The DNA replication machinery transmits dual signals to prevent unscheduled licensing and execution of centrosome duplication”
DOI:10.1038/s41467-025-63002-3

<お問い合わせ先>

前に戻る