理化学研究所(理研) 環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループの白須 賢 グループディレクター(環境資源科学研究センター 副センター長)、ブルーノ・ポクマン・ゴウ 基礎科学特別研究員、門田 康弘 専任研究員らの国際共同研究グループは、植物が病原体からの“危険サイン”を検知するセンサーの役割を持つ免疫受容体をさまざまな種から網羅的に探索する方法を開発しました。さらに、この手法を用いて、多様な細菌を認識する新たなタイプの免疫受容体を発見しました。加えて、その免疫受容体の一部を人工的に改変することで、認識可能な病原体の範囲を拡張する技術も確立しました。
今回、国際共同研究グループは、免疫受容体のうち「パターン認識受容体(PRRs)」に注目しました。そして、病原体由来の物質と直接結合する部分の構造的な特徴に基づいて、PRRsをグループ分けし、そのグループがどのような病原体を認識するかを効率良く調べるためのスクリーニング方法を開発しました。この手法を用いて、細菌が持つ低温ショックタンパク質(CSP)に由来するペプチドを認識する免疫受容体「SCORE」を発見しました。さらに、SCOREのごく一部のアミノ酸配列を人工的に設計し、置き換えることで、CSPを認識する能力を高められる技術を開発しました。
この成果により、これまで時間のかかる交配や品種改良では対応が難しかった多年草や果樹などに対しても、特定の病原体を狙って認識できる“オーダーメード型”の免疫受容体を新たに導入したり、作物が本来持っている免疫受容体をわずかに改変したりすることで、多様な病原体への柔軟な対応が可能になることが示されました。これにより、病害抵抗性作物の設計が大きく加速すると期待されます。
本研究は、科学雑誌「Science」オンライン版(現地時間9月4日付)に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費 助成事業基盤研究(A)「アポプラストにおける植物-病原体相互作用(研究代表者:白須 賢)」、同 基盤研究(B)「植物による線虫認識機構の解明(研究代表者:門田 康弘)」「植物の膜貫通型受容体(様)キナーゼを介した植物寄生線虫の認識機構の解明(研究代表者:門田 康弘)」、同 特別研究員奨励費「害虫抵抗性を付与する植物免疫受容体の同定(研究代表者:白須 賢)」、同 挑戦的研究(萌芽)「アグロバクテリウムのステルス化による植物の形質転換効率の向上(研究代表者:門田 康弘)」、文部科学省 新学術領域研究(A)「不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構(研究領域代表者:松下 智直)」の計画研究「不均一土壌環境に応答した寄生植物の感染統御機構(研究代表者:吉田 聡子)」、科学技術振興機構(JST) 革新的GX技術創出事業(GteX)「GXを駆動する微生物・植物「相互作用育種」の基盤構築(研究代表者:野村 暢彦、JPMJGX23B2)」、同 先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)「植物の誘導リプログラミングに立脚した新規バイオエコノミー基盤の創出(研究代表者:杉本 慶子、JPMJAP2306)」、RIKEN TRIPユースケースフィールドオミックスによる支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
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<論文タイトル>
- “Systematic discovery and engineering of synthetic immune receptors in plants”
- DOI:10.1126/science.adx2508
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